ファインマンさんの肩に乗って晴耕雨読の日々

ファインマンを読んで気付いた事そして日常生活の記録

式(9-43)に於ける$\bar{a}$の導入について

校訂版では,原書の量$a_{1\,\mathbf{k}}$を敢えて次式により定義した$\bar{a}_{1\,\mathbf{k}}$を式(9-43)の前で導入して,以後では$a_{\mathbf{k}}$の代わりに全てそれを使用している: $$ \def\mb#1{\mathbf{#1}} \begin{equation} \bar{a}_{1\,\mb{k}}\equiv \frac{a_{1\,\mb{k}}}{\sqrt{V}} \label{eqn:9.14-com} \end{equation} $$ その理由を考えてみる.それは,自由粒子の平面波による$\mb{A}(\mb{r},t)$のフーリエ級数展開の式 $$ \begin{equation} \mb{A}(\mb{x},t)=\sqrt{4\pi}\,c\sum_{\mb{k}} \mb{a}_{\mb{k}}(t)\,e^{i\mb{k}\cdot\mb{x}} \label{eqn:9.14-com2} \end{equation} $$ が,$L$を無限大にして$\mb{k}$の値を連続に持って行くときに,次のようなフーリエ変換の式となるようにするためである: $$ \begin{equation} \mb{A}(\mb{x},t)=\sqrt{4\pi}\,c\int_{-\infty}^{\infty}\frac{d^{3}\mb{k}}{(2\pi)^{3}}\mb{a}(\mb{k},t)\,e^{i\mb{k}\cdot\mb{x}} \label{eqn:9.14-com3} \end{equation} $$ このとき,式中に「体積因子$V$が出現しない」ようにしなければならない.もし在ると式がゼロまたは無限大に発散してしまうからだ。そのためには,§4.3の$L$が大きくて周期的境界条件が課された場合の処方 $$ \begin{equation} \sum_{\mb{k}}\ \rightarrow\ \frac{V}{(2\pi)^{3}}\int_{-\infty}^{\infty} d^{3}\mb{k},\quad e^{i\mb{k}\cdot\mb{x}}\ \rightarrow\ \frac{1}{\sqrt{V}}e^{i\mb{k}\cdot\mb{x}} \label{eqn:9.14-com4} \end{equation} $$ だけでは体積因子が残ってしまうのである.それが消えるためには,更に次の置き換え $$ \begin{equation} \mb{a}_{\mb{k}}(t)\ \rightarrow\ \frac{1}{\sqrt{V}}\mb{a}_{\mb{k}}(t) \label{eqn:9.14-com5} \end{equation} $$ すなわち式$\eqref{eqn:9.14-com}$の処方が必要なのである.このことは,実際に式$\eqref{eqn:9.14-com2}$に対し式$\eqref{eqn:9.14-com4}$かつ式$\eqref{eqn:9.14-com5}$の処方をすると式$\eqref{eqn:9.14-com3}$の形となることから確かめることが出来るであろう.

この事も,前に掲げたテル・ハール:「解析力学」の§8.1を参照して分かったことである.