ファインマンさんの肩に乗って晴耕雨読の日々

ファインマンを読んで気付いた事そして日常生活の記録

ポーラロンについて

今第11章の§11-4 極性結晶中の遅い電子 のまとめに取り組んでいるが,前に述べたようにここにずっと止まっている.そこでは「ポーラロン」の議論がされている.ポーラロンについてはファインマンも重要な論文を書いているようである.また「ファインマン統計力学」の第8章でも議論しているのでそれらを参照しながら式の導出を試みている.しかしながら初心者が取り組んでいるので議論について行くのが大変である.「経路積分」についてのポピュラーな本に,L.S.Schulman:Techniques and Applications of Path Integration がある.その本の§21 Polaron の章末のNOTESに於いて著者は次のように述べている [ただし(21.32)はファインマンの式(11.71)と式(11.72)に相当する式である]:

Feynman's various presentations are a bit hard to reconcile, as it is not always clear where he has changed his notation or where typographical errors have crept in. I have to confess that I have not reproduced all the derivations and in particular am not entirely certain of what should or need be done about the end points in (21.32).

ここではポーラロンの解説として,C.キッテル著:「固体物理学入門」第11章から文章を抜粋して載せておこう.

ポーラロン

結晶格子内の電子は,その電荷を通して格子のイオンもしくは原子と相互作用を持ち,格子に局所的な変形を起こさせる.この変形は,電子の格子内の運動に付いて行こうとする.電子とこの歪みの場とを一緒にしたものが「ポーラロン」として知られるものである.重いイオンが電子の動きに連れて動き出すことになるので,この格子変形の最も重要な効果は電子の有効質量を増加させることである.電子は,自分と共にイオンを引きずる.イオンと電子の間には強いクーロン相互作用があるので,イオン結晶ではこの効果が大きい.電子-格子相互作用の大きさは次元を持たない「相互作用定数$\alpha$」で表される.相互作用定数の値は次で与えられる: $$ \frac{1}{2}\alpha=\frac{\text{Strain energy}}{\hbar\omega_L} $$ ここで$\omega_L$は波数がゼロ近傍の光学的縦波のフォノン振動数である.この量$\frac{1}{2}\alpha$は,結晶中をゆっくり運動する電子を取り巻くフォノンの数と見做すことも出来る.「大きなポーラロン」とか「小さなポーラロン」としばしば言われる.大きなポーラロンに付随した電子はバンドの中を動き得るが,その質量はやや大きくなっている.上記の議論はこの大きなポーラロンについてのものである.

式(11.58)について

今日やっと式(11.60)まで辿り着いた.と言うのは,式(11.58)が校訂版ではその第2項で「虚数単位$i$を削除する」という修正がされており,何方が正しいのか検討するのに数週間が経ってしまったからだ.自分なりの怪しい計算では,最終的に「原書のように虚数単位$i$は付く」と判断したので,懲りずにまたここに報告しておこう.(多くの文献では校訂版のようになってはいるようなのだが!?~~~~). $$ \begin{equation} S=\frac{1}{2}\int_{0}^{T}|\dot{\mathbf{r}}|^{2}\,dt + i \frac{\alpha}{\sqrt{8}}\int_{0}^{T} dt \int_{0}^{T} ds\,\frac{e^{-i|t-s|}}{|\mathbf{r}(t)-\mathbf{r}(s)|} \tag{11.58} \end{equation} $$ このように判断した主な理由は,ファインマンが論文:「Slow Electrons in a Polar Crystal」(Physical Review Vol. 97, Number 3, February 1, 1955)の中でも虚数単位$i$を付けていること,そして論文:「Mathematical Formulation of the Quantum Theory of Electromagnetic Interaction」(Physical Review Vol. 80, Number 3, November 1, 1950)の中で次のような文章を書いているからである:

$G_{00}$は単純な指数関数なのでそれを$\exp(iI)$と書き,粒子系に対する全体の「作用」を$S=S_p+I$と考えることが出来る.そして$S_p$の代りにこの作用の遷移要素を計算するのである.しかしながら,この汎関数$I$は複素量であるので「複素作用」(complex action)と呼ぶことにする.

後でこの節の式たちについて,その導出過程を報告しようと思う.