ファインマンさんの肩に乗って晴耕雨読の日々

ファインマンを読んで気付いた事そして日常生活の記録

不規則信号の線形変換

式(12.20)などを導出するもう一つの準備として, 不規則信号を電気回路などに加えた場合の出力信号の性質について調べてみよう.この記事は, 佐藤拓宋:「電気系の確率と統計」§ 7.4 から抜粋してまとめたものである.

線形変換 (linear transformation)

入力が $x_1(t)$ の場合の出力を $y_1(t)=T[x(t)]$ とし, 入力が $x_2(t)$ の場合の出力を $y_2(t)=T[x_2(t)]$ とすると, 変換 $T$ が「線形変換」であるためには, 入力が $x_1(t)$ と $x_2(t)$ の和のときに出力は各々が1つずつ在った場合の出力の和で示されなければならない.すなわち $a,\,b$ を定数として次が成り立つ必要がある: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \def\odiff#1{\frac{d}{d #1}} \def\pdiff#1{\frac{\partial}{\partial #1}} \def\Bppdiff#1#2{\frac{\partial^{2}#1}{\partial #2^{2}}} \def\Bpdiff#1{\frac{\partial^{2}}{\partial #1^{2}}} \def\mb#1{\mathbf{#1}} \def\ds#1{\mbox{${\displaystyle\strut #1}$}} $

\begin{equation} y(t)=T[a x_1(t)+b x_2(t)]=a y_1(t) + b y_2(t) \tag{1} \end{equation}

この性質を満たすような系を「線形システム」(linear system)といっている.線形システムの入力として, ある不規則信号を与えると, その出力もまた当然ながら不規則信号になる.

インパルス応答 (impulse response)

次に入力不規則信号と出力不規則信号の間にどのような関係があるかを考えてみる.この線形系に入力としてインパルスが入った場合の応答を h(\theta) とするとき, これを「インパルス応答」という.インパルス応答は「重み関数」(weighting function) とも呼ばれ, その線形システムの特性を表現するものである.そして, 一般に 「$x(t)$ という入力が入った時の応答は, $x(t)$ を $t$ について $\Delta t$ 毎に細かい区間に分け, 各々の区間で $x(t)\Delta t$ の大きさのインパルスが入ったと考え, それらの応答の和として全体の応答が得られる」と考えれば良い:

\begin{equation} y(t)=\lim_{\Delta t\to 0} \sum_{n=0}^{\infty} x(t-n\Delta t)\,\Delta t \cdot h(n\Delta t) =\int_0^{\infty} x(t-\theta)\,h(\theta)\,d\theta \tag{2} \end{equation}

インパルス応答は, 時刻 $t=0$ に与えたインパルスの結果として出力が現れるから \theta が負の場合には h( \theta )=0 である.従って, 式(2)の入出力関係は次に書くことも出来る:

\begin{equation} y(t)=\int_{-\infty}^{\infty} x(t-\theta)\,h(\theta)\,d\theta \tag{3} \end{equation}

前述した式(12.17)$\sim$式(12.20)の修正の本質的な式は, このインパルス応答の式(3)と同じ形であることに注意しよう!!.