ファインマンさんの肩に乗って晴耕雨読の日々

ファインマンを読んで気付いた事そして日常生活の記録

物理学

Kleinertの修正

多くの問題が自力では解答出来なかったので色々な参考書から関係する部分を抜粋して解答を書いて来た.しかし, 一連の記事を書くとき再度見直していると, 色々間違えているが多くて, それらを修正しながらこのブログに載せている.問題3-10もその一つである…

ポテンシャルとゲージ変換

問題3-10 の解答の準備の最後として,「ゲージ変換」について, J.J. Sakurai の§ 2.6 から文章を抜粋して述べておく. 一定のポテンシャル 古典力学では, ポテンシャルエネルギーの原点は物理的に任意に選ぶことが出来ることはよく知られていることである.こ…

位相空間での経路積分

問題3-10の解答を書く準備として, もう一つ記事を書いておく.それは経路積分のより一般的な「位相空間に於ける経路積分」の表現についてである.ファインマンの本文の§ 2-4 の式(2.25)は, 「配位空間に於ける経路積分」の表現と言える: $ \def\ket#1{|#1\r…

速度依存ポテンシャル

問題3-10では,「電磁場に於ける荷電粒子の運動」を扱っている.この場合, 荷電粒子は速度に依存したポテンシャルを受けながら運動することになる.そこで問題に答える準備として, まず「速度依存ポテンシャル」について, テル・ハール:「解析力学」の第2章…

経路積分で使われている「量子力学の原理」

前の記事「遷移振幅と遷移要素の違い」に於いて, ファインマン物理学から「量子力学の第一原理」について書いた.しかしファインマンはそれだけでなく, ファインマン物理学V「量子力学」の第3章で,「第2番目の一般原理」そして「第3番目の一般原理」も記述し…

式(12.21) $\sim$ 式(12.25) の導出

前述の記事と関連して, 式(12.21)から式(12.25)までの導出過程も示しておこう. 指数関数の級数展開 $e^{A}\simeq 1+A+A^{2}/2!+\dotsb$ で $\displaystyle{A=i\int dt\,k(t)g(t-s)}$ とすると, $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#…

不規則信号の線形変換

式(12.20)などを導出するもう一つの準備として, 不規則信号を電気回路などに加えた場合の出力信号の性質について調べてみよう.この記事は, 佐藤拓宋:「電気系の確率と統計」§ 7.4 から抜粋してまとめたものである. 線形変換 (linear transformation) 入力…

ショット効果雑音

式(12.20)などを導出する前に, その物理的背景である「ショット効果雑音」について書いておこう.以下の記事は, 小倉久直:「確率過程論」の§ 9.2 及び佐藤拓宋:「電気系の確率と統計」そして霜田光一:「エレクトロニクスの基礎」からの抜粋をまとめたもの…

式(12.58)とデルタ関数の利用法

式 (12.58) は, 校訂版では指数部だけの表現に修正され, また $K(\omega)$ はその複素共役に変更されている: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#…

プロパゲーター及び経路積分と遷移振幅

前述の問題3-2で「振幅 $K(b,a)$ はシュレディンガー方程式を満たす特殊な波動関数と見做すことが出来る」ことを確認した.これはどう言う事なのだろうか?. J.J.Sakurai :「現代の量子力学」の § 2.5 は「プロパゲーターとファインマンの経路積分」となっ…

シュモルコフスキー(Smoluchowski)の条件

第12章は「確率論に於ける諸問題」という題になっている.その章の最初で Feynman は次のように述べている: 前の幾つかの章で多数の量子力学的問題を扱うためにどのようにして経路積分を使うかを述べた.これらの問題はその物理的性質からして確率論的問題…

Feynman checkerboard

問題 2-6 は「Feynman checkerboard」として今でも論文が書かれる問題のようだ.そこで解答を提示す前に、この問題の意義・内容をより理解する目的で、L.S.Schulmanが 「Techniques and Applications of Path Integration」(Dover Edition) にSupplements と…

the 1 + 1 Dirac equation

問題 2-6 では、1次元の運動をする自由粒子に対する相対論的量子力学の運動方程式すなわち 1+1 Dirac方程式に言及している.L.H.Kauffman, H.P.Noyes, Discrete physics and the Dirac equation, Phys. Lett. A 218 (1996) に, 時間-空間次元が 1+1 のDirac…

たたみ込みの可換性

原書及び訳本では, 式 (12.45) の前で「関数 $B$ は相関関数 $A$ の逆であること」, すなわち, 次のような「たたみ込み」(convolution) の関係式が成り立つと書いてある: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangl…

特性汎関数について

「特性汎関数」が式 (12.12) で次のように定義されている: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \def\odiff…

Poisson分布と指数分布

第12章は「関数の確率」が経路積分によって議論できることを述べている. その導入部で, 次のような意味の文章が書かれてある:「離散的事象がランダムに起こっている例として, 宇宙線が検出器に入射する場合がある.粒子が平均計測率 $\mu$ で降下すると, …

光子計数の統計に対するマンデルの公式について

前の記事に関連して参考書を調べていて気になった事柄を記しておく. エミール・ウォルフ:「光のコヒーレンスと偏光理論」の §7. 5 光のゆらぎの光電検出に関するマンデルの理論 , の中で「マンデルの公式」が示されている. 直線偏光をした入射光が, ゆら…

式(5.17)について

約1ヶ月ぶりに書く記事である.今は第 12 章「確率論に於ける諸問題」に取り組んでいるのだが, 学生時代から確率・統計は非常に苦手なので, 例によって式を理解するのに大分苦労している.そのために多くの参考書を見ながら再勉強している訳である.その中…

ポーラロンとファインマン

J.T.Devreese がポーラロンについての優れた概説を次に書いている: Polarons, Review article in Encyclopedia of Applied Physics, $\mathbf{14}$, 383, (1996) この論文は次のサイトから入手出来る: https://arxiv.org/pdf/cond-mat/0004497.pdf その § …

表 11-1 の $E_{f}$ を Mathematica で数値計算する

次の式 (11.75)の $A$ は, その中の積分を閉じた形で行うことが出来ない: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #…

式(11.78)から式(11.79)の$E_{0}^{'}$を求める

まず校訂版にあるように, 式 (11.2) と式 (11.13) とから次式が言えることに注意する: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1…

式(11.77)の$B$を求める

式 (11.77) は式 (11.62) の第 2 項目である $B$ を求めたものである: $$ B=\frac{3C}{v w} \tag{11.77} $$ ファインマンは「$B$ を求める積分は容易に行える」と言っている.論文や本で著者が「この計算は容易に実行出来る」と述べている場面によく出会う…

式(11.71)と式(11.72)の導出

10月19日に書いたが,Schulmanが「積分の端点についてどうする必要があるのかよく分からない」と述べている式の導出に挑戦して見よう. ファインマンは, まず式 (11.70) で量 $Z(t)$ を次のように定義している: $ \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\lang…

式(11-69)の導出

前に書いた記事に関連して, 式 (11.69) の導出に挑戦した過程を示しておこう.式 (11.67) を $I=\exp(I')$ とすると $I'$ は, $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangl…

wxMaximaを使う

式 (11.69) を証明するために次式が言えることを示す必要があった: $ \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \def\odiff#1{\frac{d}{d #…

ポーラロンについて

今第11章の §11-4 極性結晶中の遅い電子 のまとめに取り組んでいるが, 前に述べたようにここにずっと止まっている.そこでは「ポーラロン」( polaron) の議論がされている.ポーラロンについては, ファインマンも重要な論文を書いているようである.また, 「…

遷移振幅について

前に「遷移振幅と遷移要素の違い」について書いたが, 第8章などに振幅 $G_{mn}$ という量が出て来るので, もう一度遷移振幅についてまとめておくことにする. 振幅$G_{mn}$ について § 8-9 強制調和振動子 で「初めに状態 $n$ に在った振動子が時刻 $T$ に状…

式(11-57)中の波数$k$についての積分

式(11-57)中の波数$\mathbf{k}$についての積分を実際に行うことは数学の苦手な初心者には少しハードルが高かった。苦労した結果を少し詳しく書いておく.まず関係する部分だけを抜き出すと次となる: $$ \def\mb#1{\mathbf{#1}} \def\reverse#1{\frac{1}{#1}…

問題9-8中の振動子波動関数について

問題文の中で振動子に対する波動関数を校訂版では$\phi_1(x)=\sqrt{2}x\phi_0(x)$と修正している.これについて考えてみる.振動子の波動関数は式(8-17)$\sim$式(8-19)から $$ \def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}} \def\B…

式(9-43)に於ける$\bar{a}$の導入について

校訂版では,原書の量$a_{1\,\mathbf{k}}$を敢えて次式により定義した$\bar{a}_{1\,\mathbf{k}}$を式(9-43)の前で導入して,以後では$a_{\mathbf{k}}$の代わりに全てそれを使用している: $$ \def\mb#1{\mathbf{#1}} \begin{equation} \bar{a}_{1\,\mb{k}}\equ…