ファインマンさんの肩に乗って晴耕雨読の日々

ファインマンを読んで気付いた事そして日常生活の記録

遷移振幅について Part 2

前に「遷移振幅と遷移要素の違い」について書いたが, 第8章などに振幅$G_{mn}$という量が出て来るので,もう一度遷移振幅についてまとめておくことにする.

振幅$G_{mn}$について

§8-9 強制調和振動子 で「初めに状態$n$に在った振動子が時刻$T$に状態$m $に見出される振幅$G_{mn}$」を求めると便利であるとして「一個の調和振動子が外場ポテンシャルや擾乱と線形結合している場合に於ける$G_{mn}$」を考えている.この$G_{mn}$も「遷移振幅」の一種と思われる.そこで$G_{mn}$が前述の遷移振幅とはどんな差異があるのかを見ていこう.

この場合の系のラグランジアンは次式で与えられる: $$ \begin{equation} \def\bra#1{\mathinner{\left\langle{#1}\right|}} \def\ket#1{\mathinner{\left|{#1}\right\rangle}} \def\Braket#1#2#3{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\middle|#3\right\rangle}} L=\frac{M}{2}\dot{x}^{2}-\frac{M\omega^{2}}{2}x^{2}+f(t)x \tag{8-136} \end{equation} $$ ただし,便宜上「外力$f(t)$は$t=0$から$t=T$までの間だけ働き」,初め($t=0$)と終わり($t=T$)で振動子は自由であると仮定する. このとき,初めに状態$n$に在った振動子が時刻$T$に状態$m $に見出される振幅$G_{mn}$は次で与えられる: $$ \begin{align} G_{mn}&=e^{i E_{m}T/\hbar}\int_{-\infty}^{\infty} dx_{b} \int_{-\infty}^{\infty} dx_{a}\,\psi_{m}(x_{b})K(x_{b},T; x_{a},0)\psi_{n}(x_{a})\notag\\ &=e^{i E_m T/\hbar}\Braket{\psi_m}{U(t,t_0)}{\psi_n} \tag{8-137} \label{2017.9.17-8} \end{align} $$ 実は,基底ケットを$\ket{n}$,基底ブラを$\bra{m}$としたとき,この振幅$G_{mn}$は次で表されるものである(と思われる!?): $$ \begin{equation} G_{mn}=\Braket{m}{U_{I}(t,t_0)}{n} \label{2017.9.17-9} \end{equation} $$ ただし$U_{I}$は「相互作用表示での時間発展演算子」であり,「シュレディンガー表示での時間発展演算子」を$U(t,t_0)$としたときに, $$ \begin{equation} U_{I}\equiv e^{iH_{0}t/\hbar}U(t,t_0)e^{-iH_0t_0/\hbar},\quad H_0=\frac{M}{2}\dot{x}^{2}+\frac{M\omega^{2}}{2}x^{2} \end{equation} $$ で定義されるものである.このことはJ.J.Sakurai:「現代の量子力学」 §5.6 の記述から判断したことである.その§5.5などから「相互作用表示」が「シュレディンガー表示」や「ハイゼンベルグ表示」とどのように違うのかをまとめながら,その判断理由を以下に述べておく.

シュレディンガー表示とハイゼンベルグ表示に於ける状態ケットと観測量

時間発展の演算子$\mathscr{U}(t)=\exp(-i H t/\hbar)$を用いて違いを述べる.シュレディンガー表示では,演算子$A_{S}$は時間が経っても変化せず,状態ケット$\ket{\alpha,t}_{S}$が変化する: $$ \ket{\alpha,t}_{S}=\mathscr{U}(t)\ket{\alpha,t_0=0} $$ ただし基底ケット$\ket{a}$は状態ケット$\ket{\alpha,t}_S$とは違って変化しないので注意するべし!.

それに対して,ハイゼンベルグ表示では時間変化するのは観測量に対応する演算子であり,状態ケットの方は初期時刻$t_0=0$での値に謂わば凍りついていて動かない.そこで,ハイゼンベルグ表示での観測量$A_H(t)$と状態ケット$\ket{\alpha,t}_{H}$は次で定義される: $$ \begin{align} &A_{H}(t)\equiv \mathscr{U}^{\dagger}(t)A_{S}\mathscr{U}(t),\quad \ket{\alpha,t}_{H}=\ket{\alpha,t_0=0},\\ &A_H\bigl(\mathscr{U}^{\dagger}\ket{a}\bigr)=a\bigl(\mathscr{U}^{\dagger}\ket{a}\bigr)\notag \end{align} $$ しかしながら,期待値$\langle A\rangle$はどちらの表示でも同じになることは明らかである: $$ \begin{equation} \langle A\rangle \equiv\Braket{\alpha,t}{A_{S}}{\alpha,t}_S=\Braket{\alpha,0}{\mathscr{U}^{\dagger}A_{S}\mathscr{U}}{\alpha,0}=\Braket{\alpha,0}{A_{H}(t)}{\alpha,0}_{H} \end{equation} $$ また,「遷移振幅」を考えると2つの表示の同等性が分かる.ある物理系が$t=0$で観測量$A$の固有値$a$の固有状態に在ったとしよう.その後,時間$t$で系が観測量$B$の固有値$b$の固有状態に在る確率振幅,すなわち遷移振幅を考えて見よう.シュレディンガー表示では$t$での状態ケットは$\mathscr{U}\ket{a}$で与えられるが基底ケットの$\ket{a}$や$\ket{b}$は時間変化しない.従ってこの遷移振幅は次で表される: $$ \begin{equation} \bra{b}\cdot\bigl(\mathscr{U}\ket{a}\bigr) \label{2017.9.17-1} \end{equation} $$ これに対してハイゼンベルグ表示では,状態ケットは定常的で$\ket{a}$の状態のままであるが,「基底ケット$\ket{\beta}$が逆方向に時間変化する」.従って遷移振幅は次となる: $$ \begin{equation} \bigl(\bra{b}\mathscr{U}\bigr)\cdot\ket{a},\quad \text{when}\ \ket{\beta}\equiv \bigl(\bra{b}\mathscr{U}\bigr)^{\dagger}=\mathscr{U}^{\dagger}\ket{b}=e^{+i H t/\hbar}\ket{b} \label{2017.9.17-2} \end{equation} $$ このとき,式\eqref{2017.9.17-1}と式\eqref{2017.9.17-2}が同一であることは明らかだ: $$ \begin{equation} \Braket{b}{\mathscr{U}(t,0)}{a}=\bra{b}\cdot\bigl(\mathscr{U}\ket{a}\bigr)=\bigl(\bra{b}\mathscr{U}\bigr)\cdot\ket{a} \end{equation} $$

相互作用表示(ディラック表示)

ポテンシャル$V(t)$が時間に依存する場合,ハミルトニアン$H$は2つの部分に分けて書くことが出来る: $$ \begin{equation} H=H_0+V(t) \end{equation} $$ このときの$H_0$は時間を露わに含まない.そして$V(t)=0$の場合は次式のようにエネルギー固有ケット$\ket{n}$とエネルギー固有値$E_n$が完全に分かっていると仮定する: $$ \begin{equation} H_0\ket{n}=E_n\ket{n} \end{equation} $$ この場合のシュレディンガー表示とハイゼンベルグ表示の関係は上述から次である: $$ \begin{equation} \ket{\alpha}_H=e^{+i H t/\hbar}\ket{\alpha,t_0}_S,\quad A_H=e^{i H t/\hbar}A_S e^{-i H t/\hbar} \label{2017.9.17-3} \end{equation} $$ しかしこのとき,「相互作用表示」での状態ケット$\ket{\alpha,t}_I$と演算子すなわち観測量$A_I$は,次で定義される: $$ \begin{equation} \ket{\alpha,t}_I = e^{i H_0 t/\hbar}\ket{\alpha,t}_{S},\quad A_I \equiv e^{i H_0 t/\hbar}A_{S} e^{-i H_0 t/\hbar} \label{2017.9.17-4} \end{equation} $$ 相互作用表示の式\eqref{2017.9.17-4}と式 \eqref{2017.9.17-3}との基本的な差異は,「指数関数の中に$H$でなくて$H_0$が入っていること」である.

相互作用表示の状態ケットの時間変化を特徴付ける基礎方程式は次となる: $$ \begin{equation} i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\ket{\alpha,t}_I=V_I \ket{\alpha,t}_I \end{equation} $$ これはシュレディンガー方程式において$H$を$V_I$で置き換えた式になっていることに注意する. 更に,シュレディンガー表示で時間$t$を顕に含まない観測量$A$に対して,相互作用表示の$A_I$については次の方程式が成り立つ: $$ \begin{equation} \frac{d A_I}{d t}=\frac{1}{i \hbar}\bigl[ A_I,\,H_0] \end{equation} $$ これはハイゼンベルグの運動方程式に似ているが,$H$が$H_0$に置き換わっていることに注意する. このように,「相互作用表示(ディラック表示)」は,色々な点で「シュレディンガー表示」と「ハイゼンベルグ表示」の中間であると言うことが出来る.

相互作用表示に於ける遷移振幅

相互作用表示での時間発展演算子$U_I(t,t_0)$が与えられると,任意の状態ケットの時間発展が予言できて次式が言える: $$ \begin{equation} \ket{\alpha,t}_I=U_I(t,t_0)\ket{\alpha,t_0}_I=U_I(t,t_0)\ket{\alpha,t_0}_S \label{2017.9.17-5} \end{equation} $$ この$U_I(t,t_0)$とシュレディンガー表示での時間発展演算子$U(t,t_0)$との関連を調べる.まず式\eqref{2017.9.17-4}から, $$ \begin{align} \ket{\alpha,t}_I&=e^{i H_0 t/\hbar}\ket{\alpha,t}_S=e^{i H_0 t/\hbar}U(t,t_0)\ket{\alpha,t_0}_S\notag\\ &=e^{i H_0 t/\hbar}U(t,t_0)e^{-i H_0 t/\hbar}e^{i H_0 t/\hbar}\ket{\alpha,t_0}_S \label{2017.9.17-6} \end{align} $$ この式\eqref{2017.9.17-5}と式\eqref{2017.9.17-6}との比較から,次が言えることは明らかだ: $$ \begin{equation} U_I(t,t_0)=e^{i H_0 t/\hbar}U(t,t_0)e^{-i H_0 t/\hbar} \end{equation} $$ 次に$U_I(t,t_0)$の行列要素を$H_0$のエネルギー固有状態の間で取って見ると, $$ \begin{equation} \Braket{m}{U_I(t,t_0)}{n}=e^{i(E_m t -E_n t_0)/\hbar}\Braket{m}{U(t,t_0)}{n} \label{2017.9.17-7} \end{equation} $$ このとき$\Braket{m}{U(t,t_0)}{n}$は遷移振幅であったから,この$\Braket{m}{U_I(t,t_0)}{n}$は以前に定義した「遷移振幅」と全く同じとは言えない振幅で,位相因子$e^{i(E_m t -E_n t_0)/\hbar}$だけの差異がある.しかし遷移振幅の絶対値の2乗として定義させる「遷移確率」は,相互作用表示に於ける類似の量に一致することに注意する: $$ \left|\Braket{m}{U_I(t,t_0)}{n}\right|^{2}=\left|\Braket{m}{U(t,t_0)}{n}\right|^{2} $$ 以上において初期時間を$t_0=0$とし終時間を$t=T$とした場合を考えると,式\eqref{2017.9.17-7}は次となる: $$ \begin{equation} \Braket{m}{U_I(t,t_0)}{n}=e^{i E_m T/\hbar}\Braket{m}{U(T,0)}{n} \end{equation} $$ このとき$\Braket{m}{U(t,t_0)}{n}$は遷移振幅であるから,基底ケット$\ket{n}$をエネルギー固有状態ケット$\ket{\psi_n}$とするならば,この式はまさに式\eqref{2017.9.17-8}の振幅$G_{mn}$に一致する!: $$ \begin{equation} \Braket{m}{U_I(t,t_0)}{n}=e^{i E_m T/\hbar}\Braket{\psi_m}{U(T,0)}{\psi_n}=G_{mn} \end{equation} $$ よって式\eqref{2017.9.17-9}の結論となった訳である.

式(11-57)中の波数$k$についての積分

式(11-57)中の波数$\mathbf{k}$についての積分を実際に行うことは数学の苦手な初心者には少しハードルが高かった。苦労した結果を少し詳しく書いておく.まず関係する部分だけを抜き出すと次となる: $$ \def\mb#1{\mathbf{#1}} \def\reverse#1{\frac{1}{#1}} \begin{equation} I=\int_{-\infty}^{\infty} \frac{d^{3}\mb{k}}{(2\pi)^{3}}\,\reverse{k^{2}}\,e^{i\mb{k}\cdot\left[\mb{x}(t)-\mb{x}(s)\right]} \label{eqn11-57} \end{equation} $$ このとき$d^{3}\mb{k}$の極座標表現は$|\mb{k}|=k$とすると, $$ \begin{equation} d^{3}\mb{k}=k^{2}dk\,\sin\theta d\theta d\phi \end{equation} $$ である.よって式\eqref{eqn11-57}は, $$ \begin{align} I&=\iiint \frac{k^{2}dk\,\sin\theta d\theta d\phi}{(2\pi)^{3}}\frac{e^{i\mb{k}\cdot\left[\mb{x}(t)-\mb{x}(s)\right]}}{k^{2}} =\iiint\frac{dk\,\sin\theta d\theta d\phi}{(2\pi)^{3}}\,e^{i\mb{k}\cdot\left[\mb{x}(t)-\mb{x}(s)\right]}\notag\\ &=\reverse{(2\pi)^{3}}\int_{0}^{2\pi}d\phi\int_{0}^{\infty}dk\int_{0}^{\pi}d\theta\,\sin\theta\,e^{i\mb{k}\cdot\left[\mb{x}(t)-\mb{x}(s)\right]}\notag\\ &=\reverse{(2\pi)^{2}}\int_{0}^{\infty}dk\int_{0}^{\pi}d\theta\,\sin\theta\,e^{i\mb{k}\cdot\left[\mb{x}(t)-\mb{x}(s)\right]} \end{align} $$ ここで$\mb{k}\cdot\left[\mb{x}(t)-\mb{x}(s)\right]=k|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|\cos\theta$であるから,$d\theta$についての積分は$\,y=\cos\theta$とおくと, $$ \begin{align} \int_{0}^{\pi}d\theta\,\sin\theta\,e^{i\mb{k}\cdot\left[\mb{x}(t)-\mb{x}(s)\right]} &=\int_{-1}^{1}dy\,e^{i\mb{k}|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|y} =\reverse{ik|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|}e^{i\mb{k}|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|y}\Bigg|_{-1}^{1}\notag\\ &=\frac{2\sin k|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|}{k|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|} \end{align} $$ よって積分$I$は, $$ \begin{equation} I=\reverse{(2\pi)^{2}}\int_{0}^{\infty}dk\,\frac{2\sin k|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|}{k|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|} =\frac{2}{(2\pi)^{2}}\int_{0}^{\infty}dk\,\frac{\sin k|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|}{k|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|} \end{equation} $$ ここで$a>0$として次の積分公式が成り立つ: $$ \begin{equation} \int_0^{\infty}\frac{\sin ax}{ax}\,dx=\frac{\pi}{2a} \end{equation} $$ この公式が成り立つことは,やはり次のサイトで確認することが出来るであろう:

Wolfram|Alpha: Computational Knowledge Engine

この積分公式を利用するならば,式\eqref{eqn11-57}の波数$\mb{k}$についての積分は最終的に次の結果となる: $$ \begin{align} I&=\reverse{2\pi^{2}}\int_{0}^{\infty}dk\,\frac{\sin k|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|}{k|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|} =\reverse{2\pi^{2}}\frac{\pi}{2|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|}\notag\\ &=\reverse{4\pi|\mb{x}(t)-\mb{x}(s)|} \end{align} $$

問題9-8中の振動子波動関数について

問題文の中で振動子に対する波動関数校訂版では$\phi_1(x)=\sqrt{2}x\phi_0(x)$と修正している.これについて考えてみる.振動子の波動関数は式(8-17)$\sim$式(8-19)から $$ \def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}} \def\Braket#1#2#3{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2|#3\right\rangle}}\\ \begin{align} &\phi_0(x)=\left(\frac{m\omega}{\pi\hbar}\right)^{¼}\exp\left(-\frac{m\omega}{2\hbar}x^{2}\right),\quad \phi_1(x)=\sqrt{\frac{2m\omega}{\hbar}}x\left(\frac{m\omega}{\pi\hbar}\right)^{¼}\exp\left(-\frac{m\omega}{2\hbar}x^{2}\right)\\ &\therefore\quad \phi_1=\sqrt{\frac{2m\omega}{\hbar}}x\,\phi_0(x) \end{align} $$ よって$\displaystyle{\phi_1=\sqrt{\frac{2m\omega}{\hbar}}x\,\phi_0(x)}$の関係がある.この場合$x=Q_{\alpha}$で基底状態を$\Phi_{0}$とする.すると前述から$\displaystyle{\Phi_1=C Q_{\alpha}\,\Phi_0(x)}$と仮定してよいであろう.そこで$\Phi_1$の規格化条件を考えてみる.問題8-5の式(8-85)を用いると, $$ \begin{align} \braket{\Phi_1}{\Phi_1}&=C^{*}C\Braket{\Phi_0}{Q_{\alpha}^{*}Q_{\alpha}}{\Phi_0}=|C|^{2} \Braket{\Phi_{0}}{Q_{\alpha}^{*}Q_{\alpha}}{\Phi_0}\notag=|C|^{2}\frac{\hbar}{2\omega_{\alpha}}\Braket{\Phi_0}{1}{\Phi_{0}}\notag\\ &=|C|^{2}\frac{\hbar}{2\omega_{\alpha}}=1 \end{align} $$ 従って$\omega_{\alpha}=kc$を用いるならば,定数$C$は次であることが分かる: \begin{equation} C=\sqrt{\frac{2\omega_{\alpha}}{\hbar}}=\sqrt{\frac{2kc}{\hbar}} \end{equation} これは,問題文で提示されている規格化因子$\sqrt{2kc/\hbar}$に一致したものになることが分かる.よって問題自体は定数を$\sqrt{2}$と特定しなくても回答できた.従って,ここは単に「定数を$C$として$\phi_1(x)=Cx\phi_0(x)$である」と修正するだけでもよかったのではないかと思われた.

式(9-43)に於ける$\bar{a}$の導入について

校訂版では,原書の量$a_{1\,\mathbf{k}}$を敢えて次式により定義した$\bar{a}_{1\,\mathbf{k}}$を式(9-43)の前で導入して,以後では$a_{\mathbf{k}}$の代わりに全てそれを使用している: $$ \def\mb#1{\mathbf{#1}} \begin{equation} \bar{a}_{1\,\mb{k}}\equiv \frac{a_{1\,\mb{k}}}{\sqrt{V}} \label{eqn:9.14-com} \end{equation} $$ その理由を考えてみる.それは,自由粒子の平面波による$\mb{A}(\mb{r},t)$のフーリエ級数展開の式 $$ \begin{equation} \mb{A}(\mb{x},t)=\sqrt{4\pi}\,c\sum_{\mb{k}} \mb{a}_{\mb{k}}(t)\,e^{i\mb{k}\cdot\mb{x}} \label{eqn:9.14-com2} \end{equation} $$ が,$L$を無限大にして$\mb{k}$の値を連続に持って行くときに,次のようなフーリエ変換の式となるようにするためである: $$ \begin{equation} \mb{A}(\mb{x},t)=\sqrt{4\pi}\,c\int_{-\infty}^{\infty}\frac{d^{3}\mb{k}}{(2\pi)^{3}}\mb{a}(\mb{k},t)\,e^{i\mb{k}\cdot\mb{x}} \label{eqn:9.14-com3} \end{equation} $$ このとき,式中に「体積因子$V$が出現しない」ようにしなければならない.もし在ると式がゼロまたは無限大に発散してしまうからだ。そのためには,§4.3の$L$が大きくて周期的境界条件が課された場合の処方 $$ \begin{equation} \sum_{\mb{k}}\ \rightarrow\ \frac{V}{(2\pi)^{3}}\int_{-\infty}^{\infty} d^{3}\mb{k},\quad e^{i\mb{k}\cdot\mb{x}}\ \rightarrow\ \frac{1}{\sqrt{V}}e^{i\mb{k}\cdot\mb{x}} \label{eqn:9.14-com4} \end{equation} $$ だけでは体積因子が残ってしまうのである.それが消えるためには,更に次の置き換え $$ \begin{equation} \mb{a}_{\mb{k}}(t)\ \rightarrow\ \frac{1}{\sqrt{V}}\mb{a}_{\mb{k}}(t) \label{eqn:9.14-com5} \end{equation} $$ すなわち式$\eqref{eqn:9.14-com}$の処方が必要なのである.このことは,実際に式$\eqref{eqn:9.14-com2}$に対し式$\eqref{eqn:9.14-com4}$かつ式$\eqref{eqn:9.14-com5}$の処方をすると式$\eqref{eqn:9.14-com3}$の形となることから確かめることが出来るであろう.

この事も,前に掲げたテル・ハール:「解析力学」の§8.1を参照して分かったことである.

式(8-79)の再考察

前に書いた「式(8-78)の説明について」の中で述べた事を取り消します.その記事の中で式(8-79)を次のように修正すべきと言った: $$ \begin{equation} Q_{\alpha}=Q_{\alpha}^{C}-iQ_{\alpha}^{S} \tag{8-79'} \end{equation} $$ しかしこの修正は不要であった.その理由は,ここの「1次元結晶モデル」では基準座標$Q_{\alpha}^{C}$と$Q_{\alpha}^{S}$とは本質的に同じ基準振動モードである事を知らなかったからだ.基準座標$Q_{\alpha}^{C}$は余弦関数にそして$Q_{\alpha}^{S}$は正弦関数に相当すると見做せるが,アシュクロフト・マーミン:「固体物理の基礎」の第22章によれば「sin解は単に時間を$\pi/2\omega$だけズラしたcosine解に過ぎない」からである.ここでは「周期的境界条件」を採用しているのであるから原点は任意にずらして良いであろうし,sin関数とcos関数は同じ三角関数でただ初期位相が$\pi/2$だけズレているだけであるので上述のことはもっともである.この数学的な詳しい議論は,Wikipedia英語版の項目「nomal mode」の説明欄下にある外部リンクの次を参照すると良いであろう:

http://www.people.fas.harvard.edu/~djmorin/waves/normalmodes.pdf

このとき,運動エネルギー$T$の表現について式(8.78')に一致する結果となる: $$ \begin{align} \sum_{\alpha=0}^{\frac{1}{2}(N-1)}\dot{Q}_{\alpha}\dot{Q}_{\alpha}^{*}&=\sum_{\alpha=0}^{\frac{1}{2}(N-1)}\frac{1}{2}\left[\left(\dot{Q}_{\alpha}^{C}\right)^{2}+\left(\dot{Q}_{\alpha}^{S}\right)^{2}\right] =\sum_{\alpha=0}^{\frac{1}{2}(N-1)}\frac{1}{2}\left(\dot{Q}_{\alpha}^{C}\right)^{2}+\sum_{\alpha=0}^{\frac{1}{2}(N-1)}\frac{1}{2}\left(\dot{Q}_{\alpha}^{S}\right)^{2}\notag\\ &=\sum_{\alpha=0}^{\frac{1}{2}(N-1)}\frac{1}{2}\dot{Q}_{\alpha}^{2}+\sum_{\alpha=0}^{\frac{1}{2}(N-1)}\frac{1}{2}\dot{Q}_{\alpha}^{2} =\sum_{\alpha=0}^{\frac{1}{2}(N-1)}\frac{1}{2}\dot{Q}_{\alpha}^{2}+\sum_{\alpha=\frac{1}{2}(N+1)}^{N-1}\frac{1}{2}\dot{Q}_{\alpha}^{2}\notag\\ &=\sum_{\alpha=0}^{N-1}\frac{1}{2}\dot{Q}_{\alpha}^{2}=T \end{align} $$

また初心者が生意気な間違った記事を書いてしまった.ファインマンさんから「もう少しよく考えてみようね!」と言われているかもしれない.