ファインマンさんの肩に乗って晴耕雨読の日々

ファインマンを読んで気付いた事そして日常生活の記録

問題 3−1の解答例

Problem 3-1

The probability that a particle arrives at the point $b$ is by definition proportional to the absolute square of the kernel $K(b,a)$. For the free-particle kernel of Eq. (3-3) this is $$ P(b)\ dx = \frac{m}{2\pi\hbar(t_b-t_a)}\,dx \tag{3-6} $$ Clearly this is a relative probability, since the integral over the complete range of $x$ diverges. What does the particular normalization mean? Show that this corresponds to a classical picture in which a particle starts from the point $a$ with all momenta equally likely. Show that the corresponding relative probability that the momentum of the particle lies in the range $dp$ is $dp/2\pi\hbar$.


(解答)

§ 2- 2 から, 時刻 $t_{a}$ に点 x_{a} から出発し, 時刻 t_{b}x_{b} に到る確率 $P(b,a)$ は, $a$ から $b$ に至る振幅 $K(b,a)$ の絶対値の2乗である: $P(b,a)=|K(b,a)|^{2}$ .従って, 自由粒子の振幅の式(3-3)の場合では, $$ \begin{align} P(b,a)&=|K(b,a)|^{2}=K(b,a)\,K^{*}(b,a)\notag\\ &=\sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar (t_b-t_a)}}\sqrt{\frac{m}{-2\pi i\hbar (t_b-t_a)}}\exp\left(\frac{im(x_b-x_a)^{2}}{2\hbar(t_b-t_a)}\right)\exp\left(\frac{-im(x_b-x_a)^{2}}{2\hbar(t_b-t_a)}\right)\notag\\ &=\frac{m}{2\pi\hbar(t_b-t_a)} \tag{1} \end{align} $$ このときの物理的な状況は, 小出:「量子力学 ( 𝚰 ) 」の§ 3. 5 に拠れば, 次のように記述されるであろう:

振幅 $K(b,a)$ は平面波すなわち運動量が一定の自由粒子の運動を表している.古典的に考えたときのその軌道は直線であり, 運動が一定の範囲に閉じた領域に限定されるものではない.量子論に移っても同様で, 波動関数は何処か一定の点の近くだけに固まっているようなものではない.そもそも平面波では運動量の値が確定しているので, 不確定原理から, 位置についての不確定度は無限大と言うことになる.つまり粒子が何処に居るかさっぱり分からないのである.このことは $|K(b,a)|^{2}$ が $x$ に依らず一定になるということに対応する.

このとき, 点$x=x_b$に於いて粒子を見出す確率$P(x)\,dx$は, $$ P(x)\,dx = \frac{m}{2\pi\hbar(t_b-t_a)}\,dx \tag{3-6} $$ この確率を$x$の全領域に渡って積分すると, 明らかに発散してしまう: $$ \int_{-\infty}^{\infty} P(x)\,dx = \frac{m}{2\pi\hbar(t_b-t_a)}\int_{-\infty}^{\infty} \,dx = \infty $$ 無限の空間の何処かに居る粒子など探しようがない訳である.そこで一応規格化を諦めて, 相対確率だけを考えるべきである.従って, 式(3-6)は相対確率と見做すべきだ.

ここで, 点 $b$ を $t_a$ から微小時間だけ経った時刻 $t_b=t_a+dt$ として見る.すると式(3-6)は次に書ける: $$ P(x)\,dx = \frac{m}{2\pi\hbar}\frac{dx}{dt}=\frac{1}{2\pi\hbar}m\frac{dx}{dt}=\frac{p}{2\pi\hbar} \equiv F(p) \tag{1} $$

ここで, 佐藤拓宋:「電気系の確率と統計」の§ 4. 1 から「連続形の分布関数」についての記述をこの場合に合うように修正して示すと,

我々が普通用いる相対度数は, ある値を取る割合がいくつかというような表現になっている.この相対度数に相当するものは連続形の場合は分布関数 $F(x)$ を $x$ について微分することにより求めることが出来る: $$ f(x)=\frac{d F(x)}{dx} $$ この $f(x)$ のことを「確率密度関数」(probability density function)と呼んでいる.

よって式(1)は運動量 $p$ の分布関数 $F(p)$と見做そう.すると確率密度関数 $f(p)$ は次になる: $$ F(p)=\frac{p}{2\pi\hbar}\ \rightarrow\ f(p)dp =\frac{d F(p)}{dp}dp = \frac{1}{2\pi\hbar}\,dp \tag{2} $$ これは明らかに「一様分布」である.すなわち, 粒子が点 $a$ を出発するときは「全ての運動量を同じ確率でもって出発する」と言える.そして式(2)の右側の式からは次が言えるであろう:「運動量が領域 $dp$ に在る相対確率は \displaystyle f(p)dp=\frac{dp}{2\pi\hbar} である」.

問題 2-6の解答例

この問題文は非常に長いので原文よりも訳本の文章を示しておこう.また解答は、T.Jacobson, L.S.Schulman が書いた論文:「Quantum stochastics: the passege from a relativistic to a non-relativistic path integral」を訳したものに, 次の論文

(1). L. H. Kauffman, H.P. Noyes, Discete physics and the Dirac equation, Physics Letters A 218 (1996),

(2). Keith A. Earle, Notes on The Feynman Checkerboard Problem (2011)

などを元に加筆・修正して, この問題に合うようにしたもので代用する.単に自分では解答できなかったからである.


Problem 2-6

経路積分を定義することが出来る汎関数の類は驚くべきほどに色々ある.これまで式(2-15)で与えられるような汎関数を考えてきた.ここで全く異なるタイプを考えよう.このタイプの汎関数は1次元の相対論的運動の問題に現れる.1次元的に運動する粒子が光速で前後にのみ動けるものとする.便宜上, 光速 $c$, 粒子の質量  m, プランク定数 $\hbar$ が全て1となるように単位系をとる.そうすると 図2-4 に示すように $x$-$t$ 平面で全ての軌道は $\pm 45$° の傾きで行きつ戻りつする.このような経路の振幅は次のようにして定義される.時間を等しい長さ $\varepsilon$ の小さな区間に分割する.経路の方向転換はこれらの区間の端, 即ち時刻 $t=t_a +n\varepsilon$ ( $n$ は整数 ) に於いてのみ起こるものとする.この相対論的問題について, このような経路に沿っての運動の振幅は式(2-15) で定義される振幅とは異なる.この場合の正しい定義は次である: $$ \phi = (i\epsilon)^{R} \tag{2.26} $$ ここで $R$ は経路に沿っての方向転換の数, 即ち角(corner)の数である.

$\quad$ 問題は以下である: 読者はこの定義を用いて, 1つの角を持つ経路, 2つの角を持つ経路などの寄与の和を取ることにより核 $K(b,a)$ を計算することが出来るであろう.そこで次式を求めよ: $$ K(b,a)=\sum_{R} N(R)\,(i\epsilon)^{R} \tag{2.27} $$ ここで$N(R)$は $R$ 個の角を持つ経路の数である.4個の別々の $K$ を計算するのが良い.即ち, 点 $a$ から負の速度で出発し 点 $b$ に正の速度で到達する振幅 $K_{+-}(b,a)$ などである.$K_{-+}$、$K_{--}$ なども同様に定義される.

$\quad$ 次に時間の単位を \hbar/mc^{2} で定義する.時間間隔が非常に長く [$(t_{b}-t_{a})\gg \hbar/mc^{2}$] , 平均速度が小さい [ $x_{b}-x_{a}\ll c(t_{b}-t_{a})$ ] 場合に, 核 (kernel) が 因子 $\exp[(imc^{2}/\hbar)(t_{b}-t_{a})]$ を除いて近似的に自由粒子の核 [ 式(3-3)で与えられる ] と同じであることを示せ.ここで与えられている振幅の定義と求まった核は, 1次元の運動をする自由粒子の相対論的量子力学に於いて正しいものだ.結果はこの場合, Dirac方程式と等価である.

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( 解答 )

我々の目標は, 式(2.27)の和への寄与の大部分を起こす方向反転数を見積もることである.そこでまずは, 和 $K_{-+}$ に所属する $R$ 個の屈曲(bend)を持つ経路を考察する.それは右向きに出発し左向きで到着する経路である.その経路は左に $1+(R-1)/2$ 回反転し, 右には $(R-1)/2$ 回の反転をする ( Figure 1. を参照のこと).

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これらの条件を満たすどんな経路も, 矩形領域の左下側の任意位置に $(R-1)/2$ 個の矢印, それは右反転を示す, を配置し, そして右下側には同数の左反転を示す矢印を配置する(1つは強制的に必要なので考慮しない)ことで求めることが出来る.総計で $n$個 のステップがあり, $P$ 個は右ステップで $Q$個 は左ステップであるとしよう.従って, $n=P+Q$ である. そして, 正味の移動距離と時間は次となる: $$ x_b-x_a=(P-Q)\varepsilon\equiv M\varepsilon,\quad t_b-t_a=n\varepsilon=(P+Q)\varepsilon $$ 以上から次が言える: $$ P=\frac{1}{2}(n+M),\quad Q=\frac{1}{2}(n-M),\quad -n\le (P-Q)=M\le n=(P+Q). \tag{1} $$

$\quad$ 最後の粒子が矩形の右上に到着する場所(そこでは左反転は強制的に行われるとする)は除外されるので $(P-1)$ 個存在する右向きステップの何処に於いても, 任意に $(R-1)/2$ 個の左反転が可能である.$(R-1)/2$ 個の右反転も $(Q-1)$ 個の左向きステップの任意の位置で出現してよろしい.従って, 組合せの総数を ${}_{n}C_{r}=\left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} n \\ r \end{array}\right)$ と表記するならば, $$ \begin{equation} N_{-+}(R) = \left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} P-1 \\ \frac{1}{2}(R-1) \end{array}\right) \left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} Q-1 \\ \frac{1}{2}(R-1) \end{array}\right) \tag{2} \end{equation} $$ なぜなら, 言及した制限を除外すれば, 経路と矢印のばら撒き方には1対1対応があるからである.明らかに、$N_{-+}$ の場合の $R$ は奇数であり, 次が言える: $$ 0\le \frac{1}{2}(R-1) \le \min( P-1, Q-1). $$

$\quad$ $n\to\infty$ の極限では, 式(2.27)の和に寄与するのは, $R/n\to 0$となる$R$の値だけであろう.このことを理解するために, ある $\lambda>0$ を一定値であるとして $R/n=\lambda$ とおこう.$N_{\beta\alpha}(R)< 2^{n}$ であるから, $$ N_{\beta\alpha}(R) (\varepsilon)^{R} < 2^{n}(\varepsilon)^{\lambda n}=\left[ 2\left(\frac{t_b-t_a}{n}\right)^{\lambda}\right]^{n} \tag{3} $$ この最後の表式は $n$ のどんな $n$ のべき乗よりも速やかにゼロに向かう.それに対し和中の各項は $1/n$ でゼロに向かう.$|b-a|<t_b-t_a$ のとき、$P/n$と$Q/n$は$n\to\infty$ の極限で有限に留まる.従って $R/P\to0$ そして $R/Q\to0$ も言える.( $|x_b-x_a|=t_b-t_a$ の場合は屈曲が無いのでまさに一直線である.そのときプロパゲーターは光円錐上の1である).

$\quad$ $|x_b-x_a|< t_b-t_a$ の場合 (すなわち光円錐の能動的未来圏を進む場合)を考える.[ $P$ は $n$ ステップ中の右向きステップ数で, 粒子の移動距離 $x_b-x_a$ はあまり大きくないと考えられるから大体は $n/2$ 以上である .それに対して屈曲数 $R$ はゼロから考えて行く数である].従って $P\gg R$ であるとして $$ \underbrace{P(P-1)\dotsb (P-\frac{1}{2}(R+3))}_{\frac{1}{2}(R-1)}\ \simeq\ P^{\frac{1}{2}(R-1)} $$ と近似してしまうならば, $$ \left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} P-1 \\ \frac{1}{2}(R-1) \end{array}\right)\simeq \left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} P \\ \frac{1}{2}(R-1) \end{array}\right)\simeq \frac{P^{\frac{1}{2}(R-1)}}{\left[\left(\frac{R-1}{2}\right)!\right]^{2}} \tag{4} $$ 等号が成り立つのは $n\to\infty$ の極限のときである.この近似がどの程度のものであるかを, 例によって Mathematica で調べてみると, オーダーが同じになる位であると言える:

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$Q$ の場合にも同様な式が成り立つので, 式(4)と式(2)そして式(2.27)とから次式を得る: $$ K_{-+}=\sum_{\text{odd}\ R} (i\varepsilon)^{R} \frac{(PQ)^{\frac{1}{2}(R-1)}}{\left[\left(\frac{R-1}{2}\right)!\right]^{2}} \tag{5} $$ さてここで, 式(1)から次とおく: $$ \begin{align} PQ&=\frac{(n-M)}{2}\frac{(n+M)}{2}=\frac{1}{4}\left(n^{2}-M^{2}\right)=\left(\frac{n}{2}\right)^{2}\left[1-\left(\frac{M}{n}\right)^{2}\right]\notag\\ &=\left(\frac{n}{2\gamma}\right)^{2},\tag{6} \end{align} $$ ただし, $$ \gamma\equiv \frac{1}{\sqrt{1-v^{2}}} \quad \text{with}\quad v^{2}=\left(\frac{M}{n}\right)^{2}=\left(\frac{x_b-x_a}{t_b-t_a}\right)^{2} \tag{7} $$ これを式(5)の $N_{-+}$ に用いるならば, そのときの $K$ は, $$ K_{-+}=\sum_{\text{odd}\ R} \left(i\frac{t_b-t_a}{n}\right)^{R}\frac{\frac{2\gamma}{n}\left(\frac{n}{2\gamma}\right)^{R}}{\left[\left(\frac{R-1}{2}\right)!\right]^{2}}=\frac{2\gamma}{n}\sum_{\text{odd}\ R} \frac{\left(\frac{i(t_b-t_a)}{2\gamma}\right)^{R}}{\left[\left(\frac{R-1}{2}\right)!\right]^{2}} \tag{8} $$

$\quad$ この和は取り得る経路(alternatives)についての総和と解釈することが出来る(これが Feynman が全体の経路積分公式を提示した仕方である).そして和を構成する各々は, ちょうど $R$ 個の屈曲を持って $x_a$ から $x_b$ へ至る経路に対する確率振幅である.すると最尤の屈曲数 $R_0$ は, その確率振幅が最大の経路を見出すことで見積もることが出来る.この目的のために(to this end)、次とおく: $$ \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \begin{align} z&=\frac{(t_b-t_a)}{\gamma},\quad \text{and,}\quad \exp f(R)\equiv \frac{(z/2)^{R}}{\left[\left(\frac{R-1}{2}\right)!\right]^{2}},\notag\\ \rightarrow &\quad f(R)=R\log \frac{z}{2} - 2\log \left(\frac{R-1}{2}\right)! \approx R \log \frac{z}{2} -2\log\left(\frac{R}{2}\right)! \tag{9} \end{align} $$ ここで, 次の「スターリングの近似」を利用しよう: $$ \log n! = n\log n - n +\mathcal{O}(\log n) \tag{10} $$ すると, 上の $f(R)$ は $$ f(R)\approx R \log \frac{z}{2} -2\left(\frac{R}{2}\log \frac{R}{2}-\frac{R}{2}\right) =R\log\frac{z}{2}-R\log \frac{R}{2}+R $$ $f(R)$ が極値を取るのは, $f(R)$ の微分がゼロのときであると考えられる.即ち, $$ \ppdiff{f}{R}=\log \frac{z}{2} -\log\frac{R}{2}-R\cdot\frac{2}{R}+1 =\log \frac{z}{2} -\log\frac{R}{2}-1=0 $$ の時に最尤確率が生起する.$R\gg 1$ であったから, それはおよそ $R\sim z$ の時と見積もって良いであろう.よって時間の単位を \hbar/mc^{2} としたことを考慮すれば, 最尤の屈曲数 $R_0$ は, $$ R_0 \sim z=\frac{t_b-t_a}{\gamma}\frac{mc^{2}}{\hbar},\quad\rightarrow\quad R_0 \sim \frac{c(t_b-t_a)}{\lambda_0} \tag{12} $$ そして重大な寄与は, 次を満たす $R$ からである: $$ (R-R_0)^{2} \lesssim \left|\frac{\partial^{2}f}{\partial R^{2}}\right|^{-1}_{R_0} \sim R_0 \tag{13} $$ 式(12)が示している意味は, 粒子のCompton波長を $\lambda_c=\hbar/mc$ とし粒子の静止系即ち $\gamma_0=1$ の場合で考えるならば「時間 $t=t_b-t_a$ の間に進む距離 $x=c t$ は, 粒子のCompton波長 $\lambda_c$ の $R_0$ 倍であること」 即ち「光速で進む粒子は, 平均するとCompton波長 $\lambda_c$ 毎に方向転換しながら動いている」ということである.

$\quad$ 式(12)と式(13)から「屈曲数 $R_0$ は $n$ に依存して増大しないこと, そして粒子の静止系 ( $\gamma=1$ ) に於いては, コンプトン波長 $\lambda_c$ を $c$ で割った時間 $\hbar/mc^{2}$ を単位時間とすると, その単位時間に平均して一つの屈曲が起こる」と結論できる.

$\quad$ 式(8)の和は, $n\to\infty$ のとき正確な値となる.ここで奇数の $R$ を $R\equiv 2k+1$ で表す.そして式(5)を $k=\frac{1}{2}(R-1)$ の和と見做し $k\to\infty$ に持って行くならば, $$ \begin{align} K_{-+}&=(i\varepsilon)\sum_{k=0}^{\infty} \frac{(i\varepsilon)^{R-1}\left(\frac{n}{2\gamma}\right)^{R-1}}{(k!)^{2}} =(i\varepsilon)\sum_{k=0}^{\infty} \frac{i^{2k}\left(\frac{n\varepsilon}{2\gamma}\right)^{2k}}{(k!)^{2}}\notag\\ &= i \varepsilon\frac{mc^{2}}{\hbar}\sum_{k=0}^{\infty} (-1)^{k}\frac{(z/2)^{2k}}{(k!)^{2}}=i \varepsilon\frac{mc^{2}}{\hbar}\, J_0(z) \tag{14} \end{align} $$ ただし $J_0(z)$ はゼロ次のBessel 関数である.

ここで, 点$b$に到達するのは正の速度か負の速度かの2通りあるのだから, 全体を考えるときには場合の数を半分にすべきであろう!?.そこで「更に$1/2$を掛け合わせる」ならば, $$ K_{-+}=\frac{i \varepsilon}{2}\frac{mc^{2}}{\hbar}\sum_{k=0}^{\infty} (-1)^{k}\frac{(z/2)^{2k}}{(k!)^{2}} =\frac{i \varepsilon}{2}\frac{mc^{2}}{\hbar}\, J_0(z) \tag{14'} $$

他の $K_{\beta\alpha}$ 成分を見積る場合, 因子 $N_{++}$と$N_{--}$ を少し修正する必要がある: $$ \begin{equation} N_{++}(R) = \left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} P-1 \\ \frac{1}{2}R \end{array}\right) \left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} Q-1 \\ \frac{1}{2}R-1 \end{array}\right),\quad N_{--}(R) = \left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} Q-1 \\ \frac{1}{2}R \end{array}\right) \left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} P-1 \\ \frac{1}{2}R-1 \end{array}\right) \tag{15} \end{equation} $$ 前と同様な手続きにより, プロパゲーターの 4成分の全てが求まる: $$ \begin{equation} K(x,t; 0,0) =\frac{\varepsilon}{2}\frac{mc^{2}}{\hbar} \left(\begin{array}{@{\,}cc@{\,}} K_{++} & K_{+-} \\ K_{-+} & K_{--} \end{array}\right) = \frac{\varepsilon}{2}\frac{mc^{2}}{\hbar} \left(\begin{array}{@{\,}cc@{\,}} -\frac{t+x/c}{\theta}J_{1}(z) & i J_0(z) \\ i J_0(z) & -\frac{t-x/c}{\theta}J_1(z) \end{array}\right) \tag{16} \end{equation} $$ ただし $|x|< t$ の場合を考え, また \displaystyle \theta\equiv \frac{t}{\gamma}=t\sqrt{1-\left(\frac{v}{c}\right)^{2}} である.

$\quad$ 上式のようにプロパゲーター $K$ が得られたので, 終時刻 $t_b$ での2成分波動関数は初期時刻 $t_a$ の2成分波動関数から次のように計算できる: $$ \begin{equation} \left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} \psi_R(t_b) \\ \psi_L(t_b) \end{array}\right) =\frac{\varepsilon}{2}\frac{mc^{2}}{\hbar} \left(\begin{array}{@{\,}cc@{\,}} -\frac{t+x/c}{\theta}J_{1}(z) & i J_0(z) \\ i J_0(z) & -\frac{t-x/c}{\theta}J_1(z) \end{array}\right)\left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} \psi_R(t_a) \\ \psi_L(t_a) \end{array}\right) \tag{17} \end{equation} $$

例えば , ここで次の場合を考えてみよう: $$ \psi_{R}(t_{a})=\frac{1}{\sqrt{2}},\quad \psi_{L}(t_{a})=\frac{1}{\sqrt{2}} \tag{18} $$ このとき, $$ \begin{align} \psi_{R}(t_{b})&=\frac{\varepsilon}{2}\frac{mc^{2}}{\hbar} \Bigl\{ K_{++}\psi_R(t_a)+K_{+-}\psi_L(t_a) \Bigr\}\notag\\ &=\frac{\varepsilon}{2\sqrt{2}}\frac{mc^{2}}{\hbar} \left(-\frac{t+x/c}{\theta} J_{1}(z)+i J_0(z)\right) \tag{19} \end{align} $$ ここで Bessel 関数 $J_m(z)$ は, 引数 $z$ の絶対値が大きい場合には次のように近似出来ることを利用する: $$ \begin{align} &J_m(z)\approx \sqrt{\frac{2}{\pi z}} \cos\left(z-\frac{2m+1}{4}\pi\right),\quad z\gg 1 \notag\\ &\rightarrow\quad J_0(z)= \sqrt{\frac{2}{\pi z}} \cos\left(z-\frac{\pi}{4}\right),\quad J_1(z)=\sqrt{\frac{2}{\pi z}} \sin\left(z-\frac{\pi}{4}\right) \tag{20} \end{align} $$ また $t=t_b-t_a,\,x=x_b-x_a$ とすると, 題意の仮定から $t\gg \hbar/mc^{2}$ かつ $x\ll ct$ である.すると式(12)から, その場合の引数 $z$ は次に近似できる: $$ z=\frac{t}{\gamma}\frac{mc^{2}}{\hbar}\approx \frac{mc^{2}t}{\hbar}\sqrt{1-v^{2}/c^{2}} \approx \frac{mc^{2}t}{\hbar}\left(1-\frac{v^{2}}{2c^{2}}\right) \tag{21} $$

以上を式(19)に適用すると, $$ \begin{align} \psi_{R}(t)&\approx \frac{\varepsilon}{2\sqrt{2}}\frac{mc^{2}}{\hbar} \left\{-\gamma\left(1+\frac{v}{c}\right) J_{1}(z)+i J_0(z)\right\}\notag\\ &\approx \frac{i\varepsilon}{2\sqrt{2}} \frac{mc^{2}}{\hbar} \Bigl\{ i J_{1}(z) + J_{0}(z)\Bigr\} \notag\\ &=\frac{i c\varepsilon}{\sqrt{2}}\sqrt{\frac{m}{2\pi\hbar t}}\left\{\cos\left(z-\frac{\pi}{4}\right)+i\sin\left(z-\frac{\pi}{4}\right)\right\} \notag\\ &= \frac{i c\varepsilon}{\sqrt{2}}\sqrt{\frac{m}{2\pi\hbar t}}\, e^{i(z-\pi/4)} =\frac{\varepsilon c}{\sqrt{2}} \sqrt{\frac{i m}{2\pi\hbar t}}\,e^{iz} \tag{22} \end{align} $$ このとき, 式(21)から $$ iz\approx \frac{imc^{2}}{\hbar}t -\frac{imv^{2}t}{2\hbar}=\frac{imc^{2}}{\hbar}t -\frac{imx^{2}}{2\hbar t} \tag{23} $$ よって式(22)は, $$ \psi_{R}(t)\approx \frac{\varepsilon c}{\sqrt{2}} \sqrt{\frac{i m}{2\pi \hbar t}} \exp\left(\frac{imc^{2}}{\hbar}t\right)\exp\left(-\frac{imx^{2}}{2\hbar t}\right) \tag{24} $$ ここで「$n\to\infty$ の時に $\varepsilon c \to 1$ となると仮定し」, 題意にあるように因子 $\exp\left(\frac{imc^{2}}{\hbar}\right)$ を除くと, $$ \psi_{R}(t) \Rightarrow \frac{1}{\sqrt{2}}\sqrt{\frac{i m}{2\pi \hbar t}}\exp\left(-\frac{imx^{2}}{2\hbar t}\right) \tag{25} $$ ここで更に, 変数変換:$t\to -t'$ を行って見よう.すなわち, 「時間反転」をしてみるのである.すると, $$ \psi_{R}(t')=\frac{1}{\sqrt{2}}\sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar t'}}\exp\left(\frac{imx^{2}}{2\hbar t'}\right) =K_0(b,a)\psi_{R}(t'_a) $$ このとき核は自由粒子の核$K_0(b,a)$に一致したものになった!!.同様にして$\psi_L(t)$からは次も言える: $$ \psi_{L}(t') = \frac{1}{\sqrt{2}} K_{0}(b,a)=K_{0}(b,a)\psi_{L}(t'_a) $$ 2式を一緒にすれば, 2成分スピノールの表現は次となる: $$ \begin{equation} \left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} \psi_R(t'_b) \\ \psi_L(t'_b) \end{array}\right) =K_0(b,a)\left(\begin{array}{@{\,}c@{\,}} \psi_R(t'_a) \\ \psi_L(t'_a) \end{array}\right) \tag{26} \end{equation} $$ 従って,

$n\to\infty$ の時に $\varepsilon c \to 1$ となると仮定し,そして時間反転をするならば, このときの核は「自由粒子核」と同じものとなる.

が言えると思う!?.[ ちなみに, 修正する前に「空間反転」もして見ると書いてしまったが, その必要はなかった.空間反転に対して, スピノールは反転するが, この自由粒子核は不変であった.]

$\quad$ また Kauffman, Noyes によれば, この場合に $\psi_1$ と $\psi_2$ を次に選ぶならば, その $\psi_1,\,\psi_2$ は前の記事で述べた「$1+1$Dirac方程式」を満たすようである: $$ \psi_1 = \sum_{R} (-i)^{R}\Bigl\{ N_{++}(R)+N_{-+}(R) \Bigr\},\quad \psi_2 = \sum_{R} (-i)^{R}\Bigl\{ N_{+-}(R)+N_{--}(R) \Bigr\} $$ このことは, まだ自分では確かめて居りません!!.


(注)

[1]. 質量 m の粒子の「コンプトン波長」は $\lambda_c=h/mc$ と定義される.しかし相対論的量子論では $\lambda_c$を$2\pi$ で割った量も「コンプトン波長」と呼ぶようだ.相対論的量子論では「自然単位系」を念頭にしているからだろうか?.どちらの定義かでその数値も異なるので注意する. 例えば, 電子のコンプトン波長の数値は, $$ \lambda_e =\frac{h}{mc}=2.426\times 10^{-12} m \ ,\qquad \bar{\lambda}_e=\frac{\hbar}{mc}=\frac{\lambda_e}{2\pi}=3.862\times 10^{-13} m $$

また, J.J.Sakurai : Advanced Quantum Mechanics によれば,「自然単位系」(natural units)とは「作用(エネルギーと時間の積)を $\hbar$ で測り, 長さを時間で割った量を $c$ で計る単位系」である .

[2]. 次の微分方程式の解をBessel 関数と言う: $$ \frac{d^{2}y}{dz^{2}}+\frac{1}{z}\frac{dy}{dz}+\left(1-\frac{n^{2}}{z^{2}}\right) y=0 $$ この解を特に $J_n(z)$ と書いて「次数$n$の第一種 Bessel 関数」と言う: $$ J_n(z)=\sum_{m=0}^{\infty} \frac{(-1)^{m}}{m!(n+m)!}\left(\frac{z}{2}\right)^{n+2m} $$ 従って, $$ J_0(z)=\sum_{m=0}^{\infty} \frac{(-1)^{m}}{(m!)^{2}}\left(\frac{z}{2}\right)^{2m},\quad J_1(z)=\sum_{m=0}^{\infty} \frac{(-1)^{m}}{m!(m+1)!}\left(\frac{z}{2}\right)^{2m+1} $$ 例えば, 寺沢貫一著:「自然科学者のための数学概論」の第11章を参照せよ.

[3]. 式(15)の原文の表式には間違いがあることを次の論文に指摘されていた:

[1012.1564] Notes on The Feynman Checkerboard Problem

従って, 式(15)はそれに従って修正したものを示してある.

[4]. 原文では, 式(15)を導出する前で「 $K_{-+}$ は1格子点おきにゼロとなるので, プロパゲーターの連続体近似の表現を得るには $2\varepsilon$ で割る必要がある( Since $K_{-+}$ vanishes at every other lattice point it must be decided by $2\varepsilon$ to obtain the continuum form of the propagator)」と言う文章がある.しかし意味が掴めなかったので, この手続きは省略した.そのために, 式(24)には因子$\varepsilon c$が残ってしまったのである!!.

麦踏みと電気工事

今日は久しぶりに暖かくて風も無かったので, 今年最初の麦踏みを行なった.例年ならば1月にも実施したのだが, 麦の播種が少し深かったことと今年の冬が例年に比べすごく寒いので成長があまり良くない.のでやっと今年の第一回目の実施となったのである.

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また, 今日は階段の上下の所にある3路スイッチの交換も行った.ずっと前からスイッチを入れても階段のLEDライトが点灯しない事があって, 夜の階段の昇り降りが危なかったのである.3路スイッチは先日ホームセンターで一つ7百円弱のものを2つ買っておいたものだ.「3路スイッチの設置方法」をYoutubeの動画で確認しながらの交換であった.一応は, 第2種電気工事士の免許を持って居ります!(殆どペーパードライバーですが).

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3路スイッチとは, 階段の上と下とで電灯の点灯消灯が自在に行えるスイッチだ.「3路スイッチ」をご存知ない方は, 「どのような配線にしたらそのようなスイッチングが出来るのか?」をご自分でお考えなさると良い頭の体操になると思います.

Feynman checkerboard

問題 2-6 は「Feynman checkerboard」として今でも論文が書かれる問題のようだ.そこで解答を提示す前に、この問題の意義・内容をより理解する目的で、L.S.Schulmanが 「Techniques and Applications of Path Integration」(Dover Edition) にSupplements として書いている「Checkerboard path integral」の章の一部だけだが訳して提示しておこうと思う.L.S.Schulmanは,このFeynman checkerboard について共著論文を書いている.


Checkerboard path integral

空間が1次元$x$だけである場合を考える.その1次元空間中を運動する粒子に対するDirac方程式は次である:

 \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}}
\displaystyle
i\hbar \ppdiff{\psi}{t}=mc^{2}\sigma_x \psi - i c \hbar \sigma_z \ppdiff{\psi}{x}
\tag{38}

ただし$\psi$はカイラリティ振幅を成分とする2成分スピノルである(1次元ではスピンは存在しない).そして\sigma_x\sigma_yはPauliスピン行列である.$\ \psi$に対するプロパゲーター$G$は、$2\times2$行列であり空間と時間の関数である.すなわち、 $$ \psi(x,t)=\int dy\, G(x,t;y,0)\,\psi(y,0) $$ ファインマンは、$G$を計算する次のような方法を見出した:

$N$を固定し、FIG. 1 に示されているような経路の全てのソートを考える.すなわち$\varepsilon=t/N$として, 時刻 $k\varepsilon,\ (k=1,\dotsb,N)$ で向きを45°または135°に変えながら(すなわち速度$c$で)上向きにジグザグに進むことが出来るような経路を許可する.そのような経路の各々は $R$ 回の反転(スイッチ)を受けるとする.例えば、$G$の(++)要素は,図示されている様な点$(y,0)$を「右向きに」スタートし,「右向きで」点$(x,t)$に到着する経路の全てを対象とする.そしてそれらの経路に対して, 次の和を計算するのである: $$ \sum_{\text{Zig-Zag Paths}} \left(i\frac{t}{N}\frac{mc^{2}}{\hbar}\right)^{R} \tag{39} $$ $N\to\infty$のとき,この式(39)は$G_{++}$となる.図から, これらの経路はチェッカーのキング, またはチェスのビショップが許される動きである.そのため, この和はしばしば「チェカーボードまたはチェスボードの経路積分」と呼ばれる.しかし, これらの粒子は1つの直角方向へ動くだけであることが, ゲーム盤の駒とは違っている.

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$\quad $ 我々はこれをどう理解するべきであろうか? [ What are we to make of this? ].Feynmanはこれを1940年代に考案している.どうやらFeynmanは, それを重要なものとは考えなかったらしい.なぜなら, 彼がそれを公表したのは1965年に出版したHibbsとの共著本の中の練習問題としてだけだからである.彼は「私の目的は, 空間だけから出発してスピンを導出することだ」と, (私的にだが)述べている.従って、1空間次元に於ける彼の公式化には, すでに2成分を持った対象(object)が要求されていたのである.しかし同様な事を3次元で実行することが出来なかったとき, 彼は全ての研究を止めてしまった.

$\quad$ この考えが間違っている点を全て述べてみよう.まず、1空間次元のDirac方程式の2成分はスピンと全く関係がない.1次元ではスピンは存在しないからである.2成分はパリティに関連している.この見方をすると, 左または右へ進む経路は理に叶っているように思われる.実際, 3次元の場合にスピンが要請するのは2成分スピノルだけである.そして数を倍にするのはやはりパリティで, それにより通常の4-成分のDiracピノルが与えられるのである.次に私がこのアプローチを全く好ましくないと思う事は, 古典的な作用(action)が全く存在しないことである.恐らくFeynmanは$G$のうまい計算方法を見つけたであろうが, しかし, もし作用が存在しないならば, 彼の非常に有名な経路積分とそれが関係し得ないことは「明らか」である.そして最後の事柄, それは私が最もひどい批評 (most devastating observation) だなと思うことだが, $N\to\infty$の場合の$\Delta x$と$\Delta t$のスケーリングが間違っているという点である.経路の速度は光速$c$と考えると$\Delta x = c\Delta t$である.ただし$\Delta t=t/N$である.従って, $N\to\infty$のとき, $\Delta x / \Delta t \sim $一定, となる.これは非相対論的な経路積分とは劇的に対照的なことである.なぜなら, 非相対論的な経路積分の場合, $\Delta t$と$\Delta x$の2乗とが同じ大きさになるからである.より詳しく述べるならば,次となる: $$ \frac{\left(\Delta x \right)^{2}}{\Delta t} \sim \frac{\hbar}{m} \tag{40} $$ \hbar/m という量は, 拡散係数の類似物である.従って, 歩幅が$\Delta$のランダム・ウォークに於いて、$\Delta x,\,\Delta t\to 0$の極限のときに, ブラウン運動に対する拡散係数$D$が § 9 の式(9.6)に, $$ D=\frac{\Delta^{2}}{2\varepsilon}\equiv \frac{(\Delta x)^{2}}{2\Delta t} \sim Const. $$ となって出現し, そのとき比$D$は一定となるのである.結局,このことが密度$\rho$を次とする: $$ \rho = \frac{1}{\sqrt{4\pi D t}} \exp\left(-\frac{x^{2}}{2Dt}\right) \tag{1} $$ 他方, (非相対論的な)経路積分の場合の "密度" すなわち振幅$K$は, $$ K(x,t; 0,0) = \sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar t}}\exp\left(\frac{imx^{2}}{2\hbar t}\right) \tag{2} $$ よって, 因子$2$と$i$を除外すれば, $D$と\hbar/mとは同じ役割を持っている.この無視できない虚数 $i$ があるので, 式(40)には完全なイコールではない記号 $\sim$ が使われているのである.

$\quad$ Feynman の公式に戻り,明らかに大いなる補足をもって「私はなぜ間違ったのか」を これから述べようと思う?? (it is obvious that with so great a buildup I am about to tell you why I was wrong) .この問題のカギは, 正しい問題を問うことである.正しい質問とは,「式(39)中の和に重要な寄与をするのは, どのような大きさの $R$であろうか?」である.

これに答えるには, 反転数に従って和の項たちをグループ分けすることである.ある$N$が与えられたとき, 正確に$R$回の反転を持っているジグザグ経路の数を$\phi^{(N)}(R)$としよう.そして次とするのである: $$ G=\sum_{R} \phi^{(N)}(R) \left(i\frac{mc^{2}}{\hbar}\frac{t}{N}\right)^{R} \tag{41} $$ ただし$G$と$\phi^{(N)}(R)$は, 経路の向きをラベル付けする添字, すなわち$(\pm, \pm)$,を暗黙で持っているとする.$N$が同じであるときに, 量$\phi^{(N)}(R)(mc^{2}t/\hbar N)^{R}$を最大にする$R$を決定したい.組み合わせ論を少し用いると, 次を導出することは容易である: $$ \begin{align} &R_{max}=\frac{t}{\gamma}\frac{mc^{2}}{\hbar},\tag{42}\\ \text{where}\quad & \gamma=\frac{1}{\sqrt{1-v^{2}/c^{2}}},\qquad v=\frac{b-a}{t} . \tag{43} \end{align} $$ 驚くことに, $R_{max}$は $N$には「依存しない」.式(42)を少しばかり眺めるならば, 時間を$\hbar/mc^{2}$を単位として測定したとき, 典型的な反転数はちょうど粒子の静止系での固有時になっていることが分かるであろう.それは, 光が粒子のコンプトン波長を横切るのに要する時間である.

これがこの問題の見方である.粒子は光速という猛スピードで突っ走る.それはいつでも方向転換できる.そしてちょうどそのときに大きな放射性サンプルを得, そしていつ何時でも核は崩壊できるのである.すなわち, 存在する崩壊率(a rate of decay)とちょうど同様な具合で 反転率(a rate of reversal)も存在するのである.どんなランダム過程の場合でも, ($N$を大きくして)時間をより細かくしても, 物理的な単位時間当たりの反転数または崩壊数は不変である.崩壊に伴う確率過程はポアソン過程であり, お馴染みの公式が存在する:

Prob(崩壊率 $r$ を持った過程で単位時間当たりに $k$ 個が崩壊する)\displaystyle =\frac{r^{k}}{k!} e^{-r}

正式に言うならば, Feynmanの1次元電子理論は一つの重要な, そして馴染みのある, 相違を持った過程である.即ち, 時間$dt$中の崩壊の確率は $r dt$ であるのに対して, 時間$dt$中の反転の確率振幅は $imc^{2}dt/\hbar$ であって, 「虚数単位$i$を持っている」という相違点を持っているのである!.これは式(40)の後で議論した「実-虚の対応性」に匹敵するものである (This parallels the real-imaginary correspondence) .

~~~ 以下は疲れたので省略します.~~~~~

the 1 + 1 Dirac equation

問題 2-6 では、1次元の運動をする自由粒子に対する相対論的量子力学運動方程式すなわち 1+1 Dirac方程式に言及している.L.H.Kauffman, H.P.Noyes, Discrete physics and the Dirac equation, Phys. Lett. A 218 (1996) に,時間-空間次元が1+1のDirac方程式の求め方が書かれていたのでその要点をまとめておこう.

Dirac 方程式

相対論的ハミルトニアンは次である: $$ \mathscr{H}=c\sqrt{\mathbf{p}^{2}+m^{2}c^{2}},\quad \rightarrow\quad \left(\frac{E}{c}\right)^{2}=\mathbf{p}^{2}+m^{2}c^{2} \tag{1} $$ また相対論的力学では,粒子のエネルギー$E$ とその運動量 $\mathbf{p}$ は 4-ベクトル $p^{\mu}$ を構成しそれに対応する演算子 $\hat{p}^{\mu}$ は次である: $$ \def\pdiff#1{\frac{\partial}{\partial #1}} \begin{align} p^{\mu}&=\left( \frac{E}{c}, \mathbf{p}\right)=\left(\frac{E}{c}, p_x, p_y, p_z\right),\notag\\ \quad \hat{p}^{\mu}&=(\hat{p}^{0},\hat{p}^{1},\hat{p}^{2},\hat{p}^{3})=i\hbar\partial^{\mu}= i\hbar\left(\frac{\partial}{c\partial t},\, -\nabla\right)\notag\\ &=\left( i\hbar\frac{\partial}{c\partial t},\, -i\hbar\pdiff{x},\, -i\hbar\pdiff{y},\, -i\hbar\pdiff{z} \right) \tag{2} \end{align} $$ 従って,式(1)からはローレンツ不変な次の波動方程式が導出される: $$ \left\{ \hat{p}_0^{2}-\hat{p}_x^{2}-\hat{p}_y^{2}-\hat{p}_z^{2}-m^{2}c^{2}\right\}\psi=0 \tag{3} $$ 以下では演算子を表す記号$\hat{\ }$を省略する。

ところで,量子論的な波動方程式は次式のように時間微分について1次の形をしている: $$ \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} i\hbar\ppdiff{\psi}{t}=E\psi \tag{4} $$ しかしながら,上式(3)は $p^{0}$ について2次であるから,「量子論的な波動方程式は,演算子$\partial/\partial t$すなわち$p^{0}$について線形でなければならない」という要求に適していない.そこでDiracは $p^{\mu}$ たちが全て線形な形の波動方程式である次の「Dirac方程式」を考案した: $$ \left\{ p^{0}-\alpha_1 p_x -\alpha_2 p_y - \alpha_3 p_z - mc\beta\right\}\psi=0 \tag{5} $$ すなわち, $$ E=c\alpha_1 p_x +c\alpha_2 p_y +c\alpha_3 p_z +mc^{2}\beta \tag{6} $$ 式(5)に,左から演算子$\left\{ p^{0}+\alpha_1 p_x +\alpha_2 p_y + \alpha_3 p_z + mc\beta\right\}$を掛け合わせて式(3)に一致する形を作る.そのためには$\alpha,\beta$に次のような交換関係が成り立つ必要がある: $$ \alpha_i\alpha_j +\alpha_j\alpha_i=2\delta_{i j},\quad \alpha\beta +\alpha \beta=0 \tag{7} $$ これらが成立するためには「$\alpha$と$\beta$は$4\times 4$行列」でなければならなかった.また,その場合の波動関数$\psi$は「4成分スピノ」となるのであった.

1 + 1 Dirac 方程式

1次元空間中を運動する粒子に対するDirac方程式は,上の式(5)または式(6)に於いて空間部分を例えば$x$成分だけにすれば良い.従って$\alpha_1\to \alpha$ そして$p_x\to p$として書くならば, $$ \begin{align} &\left\{ p^{0}-\alpha p - mc\beta\right\}\psi=0,\quad\rightarrow\quad i\hbar\ppdiff{\psi}{t}=\left(-ic\hbar\alpha\pdiff{x} +mc^{2}\beta\right)\psi\tag{8}\\ E&=c\sqrt{p^{2}+m^{2}c^{2}},\quad\text{and}\quad E=c\alpha p +mc^{2}\beta \tag{9} \end{align} $$ $\alpha$と$\beta$とは一般に交換しないとして式(9)の2式の両辺を二乗し,その後で等しいと置くと, $$ \begin{align} c^{2}(p_x^{2}+m^{2}c^{2})&=(c\alpha p_x +mc^{2}\beta)^{2}\notag\\ &=c^{2}p_x^{2}\alpha^{2}+\beta^{2} m^{2} c^{4} +c^{3}p_x m(\alpha\beta+\beta\alpha) \tag{10} \end{align} $$ 従って,この式が常に成立するためには,次の交換関係が成り立てば良い: $$ \alpha^{2}=\beta^{2}=1,\quad \alpha\beta+\beta\alpha=0 \tag{11} $$ これを満足するものとして次の$2\times2$行列$\alpha$と$\beta$を採用することが出来る: $$ \begin{equation} \alpha=\left( \begin{array}{@{\, }cc@{\, }} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{array} \right),\quad \beta=\left( \begin{array}{@{\, }cc@{\, }} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{array}\right) \tag{12} \end{equation} $$ この$\alpha$と$\beta$は,ちょうどPauli行列の\sigma_z及び\sigma_xに一致している.

よって波動方程式(8)から,求めるべき「1+1 Dirac方程式」は次のように書くことが出来る:

\displaystyle
i\hbar\ppdiff{\psi}{t}=-ic\hbar\sigma_z\ppdiff{\psi}{x} +mc^{2}\sigma_x\psi
\tag{13}

ただし,この1次元運動の場合の波動関数$\psi$は明らかに2成分を持つ.この$\psi$は「カイラリティ振幅を成分とする2成分スピノ」である.また, 式(11)を満たす$\alpha$, $\beta$は式(12)以外にも存在する。