ファインマンさんの肩に乗って晴耕雨読の日々

ファインマンを読んで気付いた事そして日常生活の記録

物理学

一様分布する核電荷によるポテンシャル $V(r)$ のフーリエ成分

問題 6-9 に関連して, 今度は一様分布の核電荷が電子に及ぼすポテンシャル $V(r)$ のフーリエ成分 $v(k)$ を求めてみることにする. 核電荷 $Ze$ が半径 $r_n$ の球に一様分布していると仮定したときの電位分布 $\phi(r)$ は前のブログ記事の結果に於いて $a…

一様な電荷密度を持つ球の内外の電場と電位

問題 6-9 に関連して, 霜田,近角編:「大学演習電磁気学」から, 第1章の演習問題 [9] の問題文と解答を示しておく.(ただし, ガウス単位系の方の解答を示す). [ 問題 ] 半径 $a$ の球の内部が一様に密度 $\rho$ の電荷を持っているとき, 球の内外の電界 $E…

第2量子化 ( part 2 )

$\def\mb#1{\mathbf{#1}}$ こういうふうにして, シュレディンガーの希望して果たせなかった願い, すなわち波動 $\psi(\mb{x})$ を抽象的な座標空間内に閉じ込めないで, 3次元実空間中に迎え入れようという願いが, $\psi(\mb{x})$ の代わりに量子化した $\ha…

第2量子化 ( part 1 )

多数の同種粒子から成る系を扱う場合, その系の状態を表わすのに "色々な一粒子状態を占めている粒子の数 " で表現する「数量表示」を用い, その粒子数の変化は "消滅演算子" や "生成演算子" で表現するやり方がある.また, 多粒子系を三次元空間の中で起こ…

同種粒子から成る体系について

超伝導の議論には多体系の理論が必要であるようだ.そこで, 同種粒子から構成される量子力学的体系について, J.J.Sakurai の第6章から要点を抜粋してまとめておこう. 置換対称性 $ \def\ket#1{|#1\rangle} $ 任意の 2 粒子の一方の粒子1 が $k'$ の指標で特…

S-行列について

Ginzburg-Landau 理論には「S-行列」や「場の量子論に於ける Green 関数」が出現するようである.そこでまずは「S-行列」について, 砂川:「量子力学」から関係する部分を抜粋してまとめておこう. S-行列 2 個の異なる粒子が, 初めは十分に遠くに離れていて…

電磁気学に於けるゲージ変換

前の記事と同じく, 「超伝導入門」の § 1. 2. 4 で「波動関数を振幅と位相に分けて表わすことによる議論」を理解するために, J.J. Sakurai の § 2.6 「電磁気学に於けるゲージ変換」の部分を抜粋してまとめておく. 電磁気学に於けるゲージ変換 時間に依らな…

波動関数の解釈

経路積分がやっと読み終わったので, 次に「超伝導」について学んで行こうと思う.これからは, その際に気になった事や難解と思われた点などについても記事を書いて行こう.「超伝導」についても初学者なので入門書から取り掛かることにし, 裳華房の青木秀夫…

付録:「役に立つ定積分」に追加された公式 (A.12) について

巻末には Appendix : Some Useful Definite Integrals があるが, 校訂版には次の4つの公式が追加されているので示しておこう. $ \def\bra#1{\langle#1|} \def\ket#1{|#1\rangle} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\PKB#1#2{|#1\rangle\langle #2|} \d…

経路積分による「不確定性原理」について

前回の記事で言及したが, 経路積分では「不確定性原理」はどのように扱われているのであろうか?.ファインマンは「不確定性原理」について, 彼の著書:「光と物質のふしぎな理論」( QED : The Strange Theory of Light and Matter ) の中で次のように言べて…

スピンの歳差運動とスピノル

スピン $1/2$ を持った原子が一様な外部磁場の中に置かれた場合も考えておこう.以下は J.J.Sakurai の § 2.1 からの抜粋に少しの修正を施したものである. 磁気モーメント $\mathbf{\mu}=e\hbar/2mc$ を持つスピン $1/2$ の原子が外部磁場 $\mathbf{B}$ 中…

シュテルン-ゲルラッハの実験装置

Bell の不等式を試すための実験に用いられた物理量として, 一つは「低エネルギーの陽子-陽子散乱に於ける散乱後の陽子間のスピン相関」がある.それ以外で実験の多くで用いられた物理量は「励起原子のカスケード遷移やポジトロニウム ( $e^{+}e^{-}$ の $^{1…

ベルの不等式 part 1

以下は B.d'Espagnat:" The Quantum Theory and Reality ", Scientific American, Nov. 1979, の和訳「サイエンス(1980年1月号)(別冊58)」p.102「量子論と実在」B.デスパニヤ, の記事から要点を抜き出し, それに補足を付けてまとめたものである. 局所実在…

電場・磁場中での荷電粒子の運動について

問題 5-1 は, 荷電粒子の場中での運動を利用した質量分析器などの装置を解析する問題である.そこで, その準備知識としてシュポルスキー:「原子物理学」の § 1-9 「荷電粒子の線束の集束と単色化」からの抜粋に加筆と修正を施したものを示しておこう. § 9 …

EPRパラドックスの原論文

ブログを書くための参考書を借りようと図書館へ行った際に, V. J. ステンガー著「宇宙に心はあるか」という本が目に入り, これもついでに借りて来て読んでみた.すると, この本には題名からは予想しなかった " 量子力学の解釈問題についての現状と展望とが明…

自由粒子

問題 4-11 では「3次元の自由粒子」の波動関数を扱っている.Dirac :「量子力学」の§ 30 は「自由粒子」について述べている.そこで, しつこいようだが解答を書く前に, この Dirac の § 30 の訳文を示しおこう. 30. 自由粒子(The free particle) 量子力学…

Dirac の $\delta$ 関数

問題 4-6 の準備として Dirac の $\delta$ 関数について書いておこう.Dirac の $\delta$ 関数は, 1930 年に Paul Dirac が書いて大きな影響を与えた本:「量子力学」の中で, Dirac が離散的な「クロネッカーのデルタ」の連続的な場合の類似物を利用する際の…

電磁気学の相対論的記述 part 3

以下は「ファインマン物理学」の第25章の第5節と第26章の第1節に多少の修正と加筆をしたものである.ここでは $c=1$ とする. 動く電荷による4元ポテンシャル $ \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \def\…

Jefimenkoの公式とFeynman表現式

前のブログ:「Liénard-Wiechert の点ポテンシャルについて」に書いたように, Liénard-Wiechert ポテンシャルは「等速度運動する点電荷」が作るポテンシャルであった.それは「位置 $\mathbf{x}'$ で運動する源泉 (電荷及び電流) 」が観測点 $P$ (位置 $\mat…

電磁気学の相対論的記述 part 2

4次元の勾配 次に議論すべきは勾配の4次元的な類似物についてである. Vol. I の第14章で, 3つの演算子 $\partial/\partial x$, $\partial/\partial y$, $\partial/\partial z$ が3次元ベクトルと同じ変換性を持ち「勾配」と呼んだことを思い出そう.同じ構…

電磁気学の相対論的記述 part 1

前のブログで「Liénard-Wiechertポテンシャルは相対論的な式である」ことを述べた.相対論はずっと前に内山の教科書で学んだが内容はもうすっかり忘れているし, 最近は「相対論をちゃんと分かってないな」と痛感することがしばしばである.ファインマン物理…

遅延ポテンシャルとRutherford模型の難点

高校物理でも「ボーアの理論」は学ぶと思う.たとえばある教科書には次のような文章が載っていた: ラザフォードの原子模型には, 重大な難点があった.従来の電磁波の理論からすると, 原子核の周りの電子の回転運動のために電磁波が放射されるので, 電子はエ…

Liénard-Wiechert の点ポテンシャルについて

前に書いたブログ記事:「グリーン関数について part 4」の中で, 式(36)の「リエナール・ヴィーヒェルトのポテンシャル」を紹介した. $ \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \def\odiff#1{\frac{d}{d #1}}…

リエナール-ヴィーヒェルトのポテンシャルから導かれる電磁場

前のブログ記事:「グリーン関数について part 4」に書いたように, その記事中の式(36)の「リエナール-ヴィーヒェルトのポテンシャル」から, Jackson のやり方で電場の式(42)を求めてみよう.しかし Jackson や Panofsky & Phillips さらには Oppenheimer な…

グリーン関数について part 4

以下は, 砂川重信:「理論電磁気学」, 及び J.D.Jackson:「Classical Electrodynamics」, そして ランダウ:「力学・場の理論」から, 関係する部分を抜粋してまとめたものである.ただし Jackson は第3版の訳であるが, そこでの式は, 第10章までは SI単位…

グリーン関数について part 3

Sturm-Liouville 理論としてのグリーン関数 以下は Wikipedia(英語版) を訳出したものである. Sturm-Liouville theory 数学およびその応用に於いて, Jacques Charles François Sturm と Joseph Liouville にちなんで名付けられた古典的な Sturm-Liouville …

Kleinert の修正 part 2

問題3-11の解答をKleinertの文章をまとめることで示そうと思うが, そのkleinertの原文にタイプミスがまた在るようだったので報告しておく. §3.1 External Sources に於ける式(3.5)の前後の文章は次となっている: Consider a harmonic oscillator with an a…

ガウス積分について

この記事は本文 §3.5 からの抜粋である.あえて記事として書いておくのは, この部分は以降の章でよく利用される事柄で, 問題3-11でも用いられるからである. 最も単純な経路積分は「指数部分に全ての変数が2次の多項式の形で現れる場合」で, それは特に「ガ…

グリーン関数について part 2

この記事はJ.J.Sakurai :「現代の量子力学」第7章からの抜粋である. 散乱理論 時間を含まない散乱過程の理論 ハミルトニアンが次式のように表せると仮定する: $$ \def\mb#1{\mathbf{#1}} \def\ket#1{\left|#1\right\rangle} \def\bra#1{\left\langle#1\ri…

グリーン関数について part 1

ランダウ:「力学・場の理論」の§ 60, 小出昭一郎:「物理現象のフーリエ解析」の第4章, そして今村勤:「物理とグリーン関数」の第10章 からの文章を抜粋することで「Green関数」についてまとめておこう.問題 3-11 の回答もまた Kleinert に頼ることにした…