ファインマンさんの肩に乗って晴耕雨読の日々

ファインマンを読んで気付いた事そして日常生活の記録

the 1 + 1 Dirac equation

問題 2-6 では、1次元の運動をする自由粒子に対する相対論的量子力学運動方程式すなわち 1+1 Dirac方程式に言及している.L.H.Kauffman, H.P.Noyes, Discrete physics and the Dirac equation, Phys. Lett. A 218 (1996) に,時間-空間次元が1+1のDirac方程式の求め方が書かれていたのでその要点をまとめておこう.

Dirac 方程式

相対論的ハミルトニアンは次である: $$ \mathscr{H}=c\sqrt{\mathbf{p}^{2}+m^{2}c^{2}},\quad \rightarrow\quad \left(\frac{E}{c}\right)^{2}=\mathbf{p}^{2}+m^{2}c^{2} \tag{1} $$ また相対論的力学では,粒子のエネルギー$E$ とその運動量 $\mathbf{p}$ は 4-ベクトル $p^{\mu}$ を構成しそれに対応する演算子 $\hat{p}^{\mu}$ は次である: $$ \def\pdiff#1{\frac{\partial}{\partial #1}} \begin{align} p^{\mu}&=\left( \frac{E}{c}, \mathbf{p}\right)=\left(\frac{E}{c}, p_x, p_y, p_z\right),\notag\\ \quad \hat{p}^{\mu}&=(\hat{p}^{0},\hat{p}^{1},\hat{p}^{2},\hat{p}^{3})=i\hbar\partial^{\mu}= i\hbar\left(\frac{\partial}{c\partial t},\, -\nabla\right)\notag\\ &=\left( i\hbar\frac{\partial}{c\partial t},\, -i\hbar\pdiff{x},\, -i\hbar\pdiff{y},\, -i\hbar\pdiff{z} \right) \tag{2} \end{align} $$ 従って,式(1)からはローレンツ不変な次の波動方程式が導出される: $$ \left\{ \hat{p}_0^{2}-\hat{p}_x^{2}-\hat{p}_y^{2}-\hat{p}_z^{2}-m^{2}c^{2}\right\}\psi=0 \tag{3} $$ 以下では演算子を表す記号$\hat{\ }$を省略する。

ところで,量子論的な波動方程式は次式のように時間微分について1次の形をしている: $$ \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} i\hbar\ppdiff{\psi}{t}=E\psi \tag{4} $$ しかしながら,上式(3)は $p^{0}$ について2次であるから,「量子論的な波動方程式は,演算子$\partial/\partial t$すなわち$p^{0}$について線形でなければならない」という要求に適していない.そこでDiracは $p^{\mu}$ たちが全て線形な形の波動方程式である次の「Dirac方程式」を考案した: $$ \left\{ p^{0}-\alpha_1 p_x -\alpha_2 p_y - \alpha_3 p_z - mc\beta\right\}\psi=0 \tag{5} $$ すなわち, $$ E=c\alpha_1 p_x +c\alpha_2 p_y +c\alpha_3 p_z +mc^{2}\beta \tag{6} $$ 式(5)に,左から演算子$\left\{ p^{0}+\alpha_1 p_x +\alpha_2 p_y + \alpha_3 p_z + mc\beta\right\}$を掛け合わせて式(3)に一致する形を作る.そのためには$\alpha,\beta$に次のような交換関係が成り立つ必要がある: $$ \alpha_i\alpha_j +\alpha_j\alpha_i=2\delta_{i j},\quad \alpha\beta +\alpha \beta=0 \tag{7} $$ これらが成立するためには「$\alpha$と$\beta$は$4\times 4$行列」でなければならなかった.また,その場合の波動関数$\psi$は「4成分スピノ」となるのであった.

1 + 1 Dirac 方程式

1次元空間中を運動する粒子に対するDirac方程式は,上の式(5)または式(6)に於いて空間部分を例えば$x$成分だけにすれば良い.従って$\alpha_1\to \alpha$ そして$p_x\to p$として書くならば, $$ \begin{align} &\left\{ p^{0}-\alpha p - mc\beta\right\}\psi=0,\quad\rightarrow\quad i\hbar\ppdiff{\psi}{t}=\left(-ic\hbar\alpha\pdiff{x} +mc^{2}\beta\right)\psi\tag{8}\\ E&=c\sqrt{p^{2}+m^{2}c^{2}},\quad\text{and}\quad E=c\alpha p +mc^{2}\beta \tag{9} \end{align} $$ $\alpha$と$\beta$とは一般に交換しないとして式(9)の2式の両辺を二乗し,その後で等しいと置くと, $$ \begin{align} c^{2}(p_x^{2}+m^{2}c^{2})&=(c\alpha p_x +mc^{2}\beta)^{2}\notag\\ &=c^{2}p_x^{2}\alpha^{2}+\beta^{2} m^{2} c^{4} +c^{3}p_x m(\alpha\beta+\beta\alpha) \tag{10} \end{align} $$ 従って,この式が常に成立するためには,次の交換関係が成り立てば良い: $$ \alpha^{2}=\beta^{2}=1,\quad \alpha\beta+\beta\alpha=0 \tag{11} $$ これを満足するものとして次の$2\times2$行列$\alpha$と$\beta$を採用することが出来る: $$ \begin{equation} \alpha=\left( \begin{array}{@{\, }cc@{\, }} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{array} \right),\quad \beta=\left( \begin{array}{@{\, }cc@{\, }} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{array}\right) \tag{12} \end{equation} $$ この$\alpha$と$\beta$は,ちょうどPauli行列の\sigma_z及び\sigma_xに一致している.

よって波動方程式(8)から,求めるべき「1+1 Dirac方程式」は次のように書くことが出来る:

\displaystyle
i\hbar\ppdiff{\psi}{t}=-ic\hbar\sigma_z\ppdiff{\psi}{x} +mc^{2}\sigma_x\psi
\tag{13}

ただし,この1次元運動の場合の波動関数$\psi$は明らかに2成分を持つ.この$\psi$は「カイラリティ振幅を成分とする2成分スピノ」である.また, 式(11)を満たす$\alpha$, $\beta$は式(12)以外にも存在する。