問題 12-1 の解答例
昨日ようやくこの問題の解答を書くことが出来たので, 順番的にはずっと後のものであるが今日提示しておくことにしよう.この問題も自力では解けなかった.参考書を色々見ていたら, 斎藤慶一:「確率と確率過程」§ 3.3 に,「ほぼ解答と思える文章があった」ので, それを少し修正して解答に代えることにする.また問題文は自分で修正したものとする.
Problem 12-1
ガウス特性汎関数の最も一般的な形は次である: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \def\odiff#1{\frac{d}{d #1}} \def\pdiff#1{\frac{\partial}{\partial #1}} \def\Bppdiff#1#2{\frac{\partial^{2}#1}{\partial #2^{2}}} \def\Bpdiff#1{\frac{\partial^{2}}{\partial #1^{2}}} \def\mb#1{\mathbf{#1}} \def\ds#1{\mbox{${\displaystyle\strut #1}$}} $
上式の特性汎関数に対応する確率分布は次である:
このとき, 関数 $B(t,t')$ は $A(t,t')$ の逆核である.すなわち, 関数 $A,\,B$ は次の関係にある:
(解答)
連続な確率過程 $X(t)$ があって, 任意の有限個の時点 $t_1,\,t_2,\,\dotsb,\,t_n$ に於ける 値が正規分布に従うとする:$X(t_1),\,X(t_2),\,\dotsb\,X(t_n)$ .そのとき, この確率過程は「正規過程」または「Gauss過程」と呼ばれる.Gauss過程 $X(t)$ に於いては, $n$ 時点密度関数 $f_n$ は, 次のような $n$ 次元正規分布に従う:
ただし$\mb{\Lambda}$ は $n\times n$ の対称, 正値な正方行列であり, その要素は相関関数である:
$|\mb{\Lambda}|$、$\mb{\Lambda}^{-1}$ はそれぞれ $\mb{\Lambda}$ の行列式と逆行列である.横ベクトル $(\mb{x}-\mb{m})$ は $n$ 個の成分を持ち, 各変数の平均値からのずれを表わす.同様な成分を持つ縦ベクトルが $(\mb{x}-\mb{m})^{t}$ である.
式(1)の多次元正規分布 $f_n$ の特性関数 $\phi_n$ は次のように表される:
Gauss過程 $X(t)$ は, 平均値と相関関数が与えられれば完全に定まる.時刻 $t_0$ から $t$ までの間の観測時点数 $n$ を十分大きくして, 時間 を十分細かくしてみよう.特性関数(3)に於いて $$ u_k=u(t_k)\,dt_k $$ とおくと, 正規過程の特性汎関数は次のように表されることが分かる:
ただし$m(t)$ は確率過程 $X(t)$ の平均値の変化、$\Gamma(t_1,t_2)$ は2時点相関関数で式(3)の $\mb{\Lambda}$ に相当する.
この式(4)は, まさに本文の式(12.40)に相当する特性汎関数になっている!.すなわち, 式(4)に於いて時間変数を $t_1\to t,\,t_2\to t'$ として $u(t)\to k(t)$、$m(t)\to F(t)$、$\Gamma(t_1,t_2)\Rightarrow A(t,t')$ とすれば式(12.40)そのものになる:
従って, 式(1)はこのとき本文の式(12.41)に相当する密度汎関数 $P[f(t)]$ になっているはずである.すなわち, 式(1)に於いて $\mb{x}\to f(t)$、 $\mb{m}\to F(t)$、$\mb{\Lambda}^{-1}\Rightarrow B(t,t')$ とすれば, 式(12.41)そのものとなるべきである ( ただし規格化定数部分は本文の式(12.6)の下の記述により省略する):
しかしここで, 式(4)では行列 $\mb{\Lambda}\to \Gamma(t_1,t_2)\Rightarrow A(t,t')$ としたことに注意する.すると行列$\mb{\Lambda}$と$\mb{\Lambda}^{-1}$ の関係式すなわち「互いに逆行列の関係にある」ということは,
ここで $n\to\infty$ の極限をとると, 上式は次のような連続形となる:
更に変数を単に $t_i\to t$、、$t_j\to s$ と書き換えれば, 上式は式(12.42)と同一のものであることが分かる: