ファインマンさんの肩に乗って晴耕雨読の日々

ファインマンを読んで気付いた事そして日常生活の記録

Liénard-Wiechert の点ポテンシャルについて

前に書いたブログ記事:「グリーン関数について part 4」の中で, 式(36)の「リエナール・ヴィーヒェルトのポテンシャル」を紹介した. $ \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \def\odiff#1{\frac{d}{d #1}} \def\pdiff#1{\frac{\partial}{\partial #1}} \def\bppdiff#1#2{\frac{\partial^{2}#1}{\partial #2^{2}}} \def\bpdiff#1{\frac{\partial^{2}}{\partial #1^{2}}} \def\mb#1{\mathbf{#1}} \def\ds#1{\mbox{${\displaystyle\strut #1}$}} $

\begin{align*} &\Phi(\mb{r},t)=\left[\frac{q}{\ds{\left(R-\frac{\mb{v}\cdot\mb{R}}{c}\right)}}\right]_{ret}=\left[\frac{q}{R(1-\mb{\beta}\cdot\mb{n})}\right]_{ret},\\ &\mb{A}(\mb{r},t)=\left[\frac{q\,\mb{v}}{\ds{c\left(R-\frac{\mb{v}\cdot\mb{R}}{c}\right)}}\right]_{ret} =\left[\frac{q\,\mb{v}}{cR(1-\mb{\beta}\cdot\mb{n})}\right]_{ret}. \tag{36} \end{align*}

この動いている点電荷が作るポテンシャル $\Phi$ は, 静電ポテンシャルすなわち静止した点電荷の作るポテンシャル \displaystyle \Phi_0(\mb{r},t)=\frac{q}{R} とは, 分母に因子 $(1-\mb{\beta}\cdot\mb{n})$ だけ余分に付加されていることだけが異なっている.そのために, 例えば電荷 $q$ が観測点 $P$ に近づいて来る場合には, 場の強さが静止している場合よりも大きくなることになる.オッペンハイマー:「電気力学」の§ 10 には「Liénard-Wiechert の点ポテンシャル」について次のように記述されている:

近づいて来る電荷の方が, 同じ距離にあって遠ざかって行く電荷よりも強い場を与えるということを定性的には次のように理解することが出来る.すなわち, 近づいてくる場合は下図の$A$点に於ける遅延時刻は$B$点に於ける遅延時刻よりも遅い.従って, $B$を基準にして考えると近づいて来る電荷に対しては, あたかも$AB$の距離が実際のものより長くなったように効くことになり, 他方, 遠ざかって行く電荷に対しては, その効果は実際の距離よりも短くなったように現れる.このことは近づいて来る電荷は, 実際のものよりも大きい電荷のような効果を持ち, 遠ざかって行く電荷は, それよりも小さい電荷のような効果を示すことを意味している.従って, 前者は後者よりも強い場を$P$点に与えることになる.この考察を星雲に適用すると, 同一の強度で観測されるためには, 地球に対して静止している星雲よりも, 地球から遠ざかって行く星雲の方が大きい星雲でなければならなぬことになる.

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しかし初学者にはこの文章は少し分かりづらいと思われる.これと同じ物理的説明が「ファインマン物理学」のVol. II § 21-5 に分かりやすく書かれている.そこでその部分を以下に抜粋しておこう.ただし, 式は Gauss 単位系に書き直したものを示すことにする.


電子のような点電荷 $q$ が任意の仕方で運動している場合に, その電荷 $q$ が点 $(x_1,y_1,z_1)$ に生成するスカラーポテンシャル $\phi(1)$ を計算してみよう.「点」電荷とは, 電荷密度 $\rho(x,y,z)$ を持ち幾らでも小さくなれる非常に小さな帯電球という意味である.下図のように, 運動している点電荷の位置を(2)としたときに, 観測点(1)に於ける $\phi$ は次式で表される ( 今までの $R$ は $r_{12}$ とする ):

\begin{equation*} \phi(1,t)=\int \frac{\rho(2,t-r_{12}/c)}{r_{12}}\,dV_2,\quad r_{12}=R \tag{1} \end{equation*}

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この答えは, 大抵誰でも最初は次のように考えるであろう.すなわち, そのような点電荷に渡って $\rho$ を積分するとちょうど全電荷 $q$ となるのだから, 次になるであろうと:

\begin{equation*} \phi(1,t)=\frac{q}{r^{'}_{12}}\qquad \text{( wrong )}. \tag{2} \end{equation*}

しかしこれは間違いである.ただし$\mb{r}^{'}_{12}$ は, 遅延時刻 $t'=t-r_{12}/c$ に於ける点(2)の電荷から点(1)へ向かう径ベクトル ( radius vector ) の意味である.

正しい答えは次である:

\begin{equation*} \phi(1,t)=\frac{q}{\ds{R^{'}-\frac{\mb{v}^{'}\cdot\mb{R^{'}}}{c}}}=\frac{q}{r_{12}}\cdot\frac{1}{1-v_{r'}/c} \tag{3} \end{equation*}

ただし$v_{r^{'}}$ は, 運動する電荷の速度 $\mb{v}$ の $\mb{r}^{'}_{12}$ に平行な成分, すなわち点(1)に向かう速度成分である. ではなぜこうなるのかを示すことにしよう.議論に追いて行き易いように, まずは下図に示すような, 速度$v$で点(1)に向かって運動している小さな立方体形に分布した「点」電荷について計算しよう.立方体の一片の長さは $a$ とする.それは, 電荷の中心から点(1)までの距離 $r_{12}$ に比べずっとずっと小さいとする.

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さて今度は, 式(1)の積分を計算するのに, 積分の基本に回帰しよう.すなわち積分を次のような和の形として書き表すのである:

\begin{equation*} \sum_{i} \frac{\rho_i \Delta V_i}{r_i}, \tag{4} \end{equation*}

ただし $r_i$ は $i$ 番目の体積要素 $\Delta V_i$ と点(1) 間の距離であり, $\rho_i$ は遅延時刻 $t_i=t-r_i/c$ に於ける $\Delta V_i$ の電荷密度である.$r_i\gg a$ なので, 常に「体積要素$\Delta V_i$ は $\mb{r}_{12}$ に垂直な長方形に薄くスライスされた形である」と考えるのが便利である ( 図の(b)を参照 ).

体積要素 $\Delta V_i$ は $a$ よりもずっと小さいある厚さ $w$ であると仮定することから始めよう.個々の体積要素は, 次図に示すように出現するであろう.

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ただし, 体積要素は電荷を覆う以上のものが書いてある.しかし電荷は示していない.それにはちゃんと理由がある (and for a good reason ).電荷は何処に書くべきであろうか?.各々の体積要素 $\Delta V_i$ に対して, $\rho$ は遅延時刻 $t_i=t-r_i/c$ に於けるものを考えなければならない.しかし電荷は「動いている」ので, 各々の体積要素$\Delta V_i$ に対する電荷は異なる場所にあるのだ!.

上図 (a) の1とラベル付けされた体積要素から考えて行こう.それは図(b)に示されているように, 遅延時刻 $t_1=(t-r_1/c)$ に電荷の後端が$\Delta V_1$ を占拠するように選択された体積要素である.すると$\rho_2\Delta V_2$は, わずかに後の時刻 $t_2=(t-r_2/c)$での電荷の位置を見積もる必要がある.そのとき電荷は図(c)で示された位置に来ているであろう.以下 同じことが $\Delta V_3$, $\Delta V_4$ などに言える.するとその和を見積もることが出来る.

各々の $\Delta V_i$ の厚さは $w$ であるから, その体積は $wa^{2}$ である.すると電荷分布とオーバーラップする(重なり合う) 各体積要素は $wa^{2}\rho$ だけの電荷量を含んでいる.ただし $\rho$ は立方体中の電荷密度であり, それは一様であるとする.点(1)と電荷の距離が大きい場合, 誤差を無視して, 分母にある全ての $r_i$ たちをある平均値, 例えば, 電荷の中心の遅延した位置 $r^{'}$ に等しいとしよう.すると式(4)の和は次となる:

\begin{equation*} \sum_{i=1}^{N} \frac{\rho w a^{2}}{r^{'}}, \end{equation*}

ただし $\Delta V_N$ は図(e)に示されているように, 電荷分布とオーバーラップする最後の $\Delta V_i$ 要素である.すると, 和は明らかに次のように書ける:

\begin{equation*} \sum_{i=1}^{N} \frac{\rho w a^{2}}{r^{'}}=N\frac{\rho w a^{2}}{r^{'}}=\frac{\rho a^{3}}{r^{'}}\left(\frac{Nw}{a}\right). \end{equation*}

さてこの $\rho a^{3}$ はちょうど全電荷 $q$ であり, また $Nw$ は図(e)に示されている長さ $b$ である.従って, 次式を得る:

\begin{equation*} \phi=\frac{q}{r^{'}}\left(\frac{b}{a}\right). \tag{5} \end{equation*}

$b$ とは何であろうか?.それは, 遅延時刻$t_1=(t-r_1/c)$から$t_N=(t-r_N/c)$までの間に電荷が運動することで増加した電荷立方体の長さである.それは電荷が次の時間の間に移動する距離である:

\begin{equation*} \Delta t =t_N -t_1 =\frac{r_1-r_N}{c}=\frac{b}{c}. \end{equation*}

電荷の速さは $v$ であったから, 移動した距離は $v \Delta t= v b/c$ である.しかし長さ $b$ はこの長さを $a$ に付加したものであるから, $$ b=a+\frac{v}{c}b. $$ これを $b$ について解くと次を得る: $$ b=\frac{a}{1-(v/c)}. $$ ただし $v$ は, 当然ながら遅延時刻 $t'=(t-r'/c)$ での速さである.それを示すには $[1-v/c]_{ret}$ と書けばよい.するとポテンシャルの式(5)は次となる:

\begin{equation*} \phi(1,t)=\frac{q}{r^{'}}\frac{1}{[1-v/c]_{ret}}. \end{equation*}

この結果は最初に述べた主張(assertion)の式(3)に一致している.ここに修正因子が出現したのは, 積分電荷上を掃引( sweep )する間に電荷が移動しているからである.電荷が点(1)に向かって運動する場合, この修正因子の積分への寄与は, 比 $b/a$ だけの増加となる.従って, 補正された積分は, $q/r^{'}$ に $b/a$ すなわち $1/[1-v/c]_{ret}$ を掛け合わせたものとなる.

もし電荷の速度が観測点(1)の方向を向いていないならば, その速度の点(1)方向成分が何であるかは分かるであろう.この速度成分を $v_r$ と呼ぶならば, 修正因子は $1/[1-v_r/c]_{ret}$ となる.また, ここで行なった分析は, 任意の形状の電荷分布の場合にもまったく同様に行えるものである.すなわち電荷分布は立方体である必要はない.最後に, 最終結果に電荷 $q$ の大きさは入っていないので, 電荷を任意の大きさに縮めても, たとえ点電荷まで縮めても, 同じ結果が成り立つことに注意する.一般な結果として, 任意の速度で運動している点電荷に対するスカラーポテンシャルは次であると言える:

\begin{equation*} \phi(1,t)=\frac{q}{r^{'}[1-v_r/c]_{ret}}. \tag{6} \end{equation*}

この結果は, しばしば次の等価な式に書かれる:

\begin{equation*} \phi(1,t)=\frac{q}{[r-(\mb{v}\cdot\mb{r}/c)]_{ret}}, \tag{7} \end{equation*}

ただし $\mb{r}$ は電荷から位置(1)へ向かうベクトルである.位置(1)は $\phi$ が評価される場所である.そしてカギ括弧中の全ての量は, 遅延時刻 $t'=t-r'/c$ での値であるべきである.

式(36)の点電荷に対する $\mb{A}$ を計算する場合にも同じことが言える.電流密度は $\rho\mb{v}$ であり, $\rho$ についての積分は, $\phi$ の場合に見出したものと同じである.よって, ベクトルポテンシャルは次となる:

\begin{equation*} \mb{A}(1,t)=\frac{q\,\mb{v}_{ret}}{c[r-(\mb{v}\cdot\mb{r}/c)]_{ret}}, \tag{8} \end{equation*}

電荷に対するポテンシャルが最初にこの形に導出されたのは LiénardとWiechert によるので, それは「Liénard-Wiechert ポテンシャル」と呼ばれている.

任意のやり方で運動している電荷によって生成される電磁場についての式は次である:

\begin{equation} \mb{E}=q\left[\frac{\mb{e}_{r^{'}}}{r^{'2}}+\frac{r'}{c}\frac{d}{dt}\left(\frac{\mb{e}_{r^{'}}}{r^{'2}}\right)+\frac{1}{c^{2}}\frac{d^{2}}{dt^{2}} \mb{e}_{r^{'}}\right],\quad c\mb{B}=\mb{e}_{r^{'}}\times \mb{E} \tag{21.1} \end{equation}

この式(21.1)に戻るには, 式(7)及び式(8)のポテンシャルから $\mb{E}$ と $\mb{B}$ を計算するだけが必要である. それには $\mb{B}=\nabla\times\mb{A}$ と$\mb{E}=-\nabla \phi -\partial\mb{A}/c\partial t$ を用いる.それは今や算術の問題に過ぎない.しかしながら, その計算はかなり複雑である.従って, その詳細を書くことはしない.恐らく「式(21.1)は我々が導出したリエナール・ヴィーヒェルトのポテンシャルと等価である」という我々の言葉を受け入れることになるであろう (Perhaps you will take our word for it that Eq.(21.1) is equivalent to the Liénard-Wiechert potentials we have derived).

もし多くの紙面と時間があるならば, それを自分の力でやって見ようとすることが出来る.その場合には2つの忠告をしておこう. まず, $r^{'}$ が $t^{'}$ の関数であるので $r^{'}$ の微分は複雑であることを忘れないことである.2番目は, 式(21.1)を導出しようとしないで, その中の全ての微分を実行してしまうことだ.そしてその後, その得られた結果を式(7)と式(8)のポテンシャルから得られる $\mb{E}$ と比較するのである.

等速運動する電荷が作るポテンシャル;ローレンツの公式

ついでに,ファインマン物理学の§ 21-6 からの抜粋も書いておこう.ただし式は Gauss 単位系のものに書き直してある.

次に, リエナール・ヴィーヒェルトのポテンシャルを特別な場合, すなわち直線上を一定な速さ(uniform velocity)で運動する電荷の場を見出すこと, に利用して見たい.このことは, 後で相対論の原理を用いてもう一度行なうつもりである.我々が電荷の静止系に立っている場合に, ポテンシャルが如何なものであるかはすでに分かっている.電荷が運動している場合には, 一つの系から他の系へ相対論的な変換を行うことで全てを計算すること (figure everything out) が出来る.しかし相対論の起源は電磁気学の理論である.ローレンツ変換の公式はローレンツ電磁気学の方程式を研究しているときに発見したものである.物事が何処から由来しているのかがよく分かるように, 我々はマクスウェル方程式がまさにローレンツ変換を導出することを示したいと思う.まずはマクスウェル方程式の電気力学から直接的に一定速度で運動している電荷の作るポテンシャルを計算してみる.マクスウェル方程式が運動する電荷のポテンシャルを導出することは前節で示した:

\begin{align} \phi(1,t)&=\frac{q}{[r-(\mb{v}\cdot\mb{r}/c)]_{ret}} \tag{21.33}\\ \mb{A}(1,t)&=\frac{q\,\mb{v}_{ret}}{c\,[r-(\mb{v}\cdot\mb{r}/c)]_{ret}} \tag{21.34} \end{align}

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$x$-軸にそって一定な速度で運動している電荷が位置 $P$ に作るポテンシャルを見出す.

従って, それらのポテンシャルを利用するならば, 我々はマクスウェル理論を用いていることになる.

電荷は $x$-軸に沿って速度 $v$ で運動していると仮定する.我々が得たいのは上図に示すような点 $P(x,y,z)$ に於けるポテンシャルである.電荷が原点に在るときの時刻が $t=0$ であるならば, 時刻 $t$ で電荷は $x=vt$, $y=0$, $z=0$ の位置にある.しかしながら, 我々が知りたいのは次の遅延時刻 $t'$での位置である:

\begin{equation} t'=t-\frac{r'}{c}, \tag{21.35} \end{equation}

ただし $r'$ は「遅延時刻に於ける電荷と点 $P$ との距離である.以前の時刻 $t'$ で, 電荷は $x=vt'$ にあった.従って,

\begin{equation} r'=\sqrt{(x-vt')^{2}+y^{2}+z^{2}} \tag{21.36} \end{equation}

$r'$ または $t'$ を見出すには, この方程式と式(21.35)とを結びつける必要がある.まず, 式(21.35)を $r'$ について解いたものを式(21.36)に代入することで $r'$ を消去する.それから, 両辺を2乗する.すると次を得る:

\begin{equation*} c^2(t-t')^{2}=(x-vt')^{2}+y^{2}+z^{2}, \end{equation*}

これは $t'$ について2次の式である.2乗された2項式を展開し $t'$ の同類項 (like terms) を集めると次式を得る:

\begin{equation*} (v^{2}-c^{2})t^{'2}-2(xv-c^{2}t)t' +x^{2}+y^{2}+z^{2}-(ct)^{2}=0 \end{equation*}

これを $t'$ について解くと,

\begin{equation} \left(1-\frac{v^{2}}{c^{2}}\right)t'=t-\frac{vx}{c^{2}} -\frac{1}{c}\sqrt{(x-vt)^{2}+\left(1-\frac{v^{2}}{c^{2}}\right)\left(y^{2}+z^{2}\right)}. \tag{21.37} \end{equation}

$r'$ を得るためには, この $t'$ についての表現を次の式に代入する必要がある:

\begin{equation*} r'=c(t-t') \end{equation*}

以上で式(21.33)から $\phi$ を見出す準備は出来た.$\mb{v}$ は一定であることから, それは次となる:

\begin{equation} \phi(x,y,z,t)=\frac{q}{r'-(\mb{v}\cdot\mb{r}'/c)}. \tag{21.38} \end{equation}

$\mb{r}'$ 方向の $\mb{v}$ の成分は $v\times(x-vt')/r'$ である.従って $\mb{v}\cdot\mb{r}'$ はちょうど $v\times(x-vt')$であるから, 分母全体は次となる:

\begin{equation*} c(t-t')-\frac{v}{c}(x-vt')=c\left[t-\frac{vx}{c^{2}}-\left(1-\frac{v^{2}}{c^{2}}\right)t'\right] \end{equation*}

$(1-v^{2}/c^{2})t'$ を式(21.37)のそれで置き換えるならば, $\phi$ について次の式が得られる:

\begin{equation*} \phi(x,y,z,t)=\frac{q}{\sqrt{\ds{(x-vt)^{2}+\left(1-\frac{v^{2}}{c^{2}}\right) \left(y^{2}+z^{2}\right)}}}. \end{equation*}

この式は次のように書き直してみると, より理解しやすいものとなる:

\begin{equation} \phi(x,y,z,t)=\frac{q}{\ds{\sqrt{1-\frac{v^{2}}{c^{2}}}}} \frac{1}{\left[\ds{\left(\frac{x-vt}{\sqrt{1-v^{2}/c^{2}}}\right)^{2}+y^{2}+z^{2}}\right]^{1/2}}. \tag{21.39} \end{equation}

( 従って, リエナール・ヴィーヒェルトのポテンシャル $\phi$ の式(21.38)は, この式(21.39)の形に書けること, すなわちリエナール・ヴィーヒェルトのポテンシャルは相対論を満たす式であることに注意しておこう!).ベクトルポテンシャル $\mb{A}$ は同じ表現に因子 $\mb{v}/c$ を追加したものである:

\begin{equation*} \mb{A}=\frac{\mb{v}}{c}\phi. \end{equation*}

式(21.39)中に, ローレンツ変換の始まりを明確に見ることが出来る.もし電荷がその自身の静止系の原点に在るならば, そのポテンシャルは次であろう:

\begin{equation*} \phi(x,y,z)=\frac{q}{\left[x^{2}+y^{2}+z^{2}\right]^{1/2}}. \end{equation*}

それを我々は動いている座標系の中で観察している.するとその座標が次式によって変換されるべきであるように見える:

\begin{equation*} x\to \frac{x-vt}{\sqrt{1-v^{2}/c^{2}}},\quad y\to y,\quad z\to z. \end{equation*}

これはちょうどローレンツ変換になっている.我々が行なったことは, 本質的にローレンツが変換を発見したやり方である.

しかしながら, 式(21.39)の前に出現している余分な因子 $\sqrt{1-v^{2}/c^{2}}$ は何であろうか?.また粒子の静止系ではベクトルポテンシャル $\mb{A}$ はゼロであるが, それはどのような形になるのであろうか?.まもなく示されることであるが, $\mb{A}$と$\phi$ は「一緒になって」4-ベクトルを形成する.それは粒子の運動量 $\mb{p}$ と全エネルギー $U$ が 4-ベクトルを成すのと同様である.式(21.39)の余分な因子 $\sqrt{1-v^{2}/c^{2}}$ は, 4-ベクトルの成分を変換する際にいつも入ってくる因子と同じものである.例えば電荷密度 $\rho$ は$\rho/\sqrt{1-v^{2}/c^{2}}$ へ変換される.実際, $\mb{A}$ と $\phi$ が 4-ベクトルの成分であることは, 式(21.4)と式(21.5)とからほとんど明らかである.なぜなら, 第13章で $\mb{j}$ と $\rho$ は 4-ベクトルの成分であることをすでに示しているからである.

\begin{align} &\nabla^{2}\phi-\frac{1}{c^{2}}\bppdiff{\phi}{t}=-4\pi\rho \tag{21.4}\\ &\nabla^{2}\mb{A}-\frac{1}{c^{2}}\bppdiff{\mb{A}}{t}=-\frac{4\pi}{c}\mb{j} \tag{21.5} \end{align}

後で, 電磁気学の相対性をより詳しく取り上げるであろう.従って, ここではマクスウェル方程式がどのようにして自然にローレンツ変換を導くか (lead to) を示すだけにしたい.そして, 電磁気の法則はアインシュタインの相対論に対してすでに正しいという事が分かっても驚かないであろう.ニュートンの力学の法則の場合にしなければならなかった修正は, 電磁気の法則には行う必要がないのである.