ファインマンさんの肩に乗って晴耕雨読の日々

ファインマンを読んで気付いた事そして日常生活の記録

ファインマン

問題 12-1 の解答例

昨日ようやくこの問題の解答を書くことが出来たので, 順番的にはずっと後のものであるが今日提示しておくことにしよう.この問題も自力では解けなかった.参考書を色々見ていたら, 斎藤慶一:「確率と確率過程」§ 3.3 に,「ほぼ解答と思える文章があった」の…

シュモルコフスキー(Smoluchowski)の条件

第12章は「確率論に於ける諸問題」という題になっている.その章の最初で Feynman は次のように述べている: 前の幾つかの章で多数の量子力学的問題を扱うためにどのようにして経路積分を使うかを述べた.これらの問題はその物理的性質からして確率論的問題…

問題 3-1 の解答例

Problem 3-1 The probability that a particle arrives at the point $b$ is by definition proportional to the absolute square of the kernel $K(b,a)$. For the free-particle kernel of Eq. (3-3) this is $$ P(b)\ dx = \frac{m}{2\pi\hbar(t_b-t_a)}\…

問題 2-6 の解答例

この問題文は非常に長いので原文よりも訳本の文章を示しておこう.また解答は、T.Jacobson, L.S.Schulman が書いた論文:「Quantum stochastics: the passage from a relativistic to a non-relativistic path integral」を訳したものに, 次の論文 (1). L. H…

Feynman checkerboard

問題 2-6 は「Feynman checkerboard」として今でも論文が書かれる問題のようだ.そこで解答を提示す前に、この問題の意義・内容をより理解する目的で、L.S.Schulmanが 「Techniques and Applications of Path Integration」(Dover Edition) にSupplements と…

問題 2-5 の解答例

この問題文も校訂版を修正したものにする. $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \def\odiff#1{\frac{d}{d #…

問題 2-4 の解答例

原書の問題文には問題点があるため、校訂版を更に加筆したものとした. $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}}…

問題 2-3 の解答例

校訂版はこの問題文の表記を変更している.しかしこれ以降で示すブログの解答例は, 原則として「原書」の問題文に対してのものにしようと思う.ただし, 符号などで校訂版の方が良いと判断されるなどの場合は例外とする.また, これ以降は問題文も原則として…

問題 2-2 の解答例

【問題 2−2】調和振動子の場合 $L=(m/2)(\dot{x}^{2}-\omega^{2}x^{2})$ である.$T=t_b-t_a$ として古典的作用が \begin{equation} S_{cl}=\frac{m\omega}{2\sin \omega T}\Bigl[ (x_a^{2}+x_b^{2})\cos\omega T -2 x_a x_b \Bigr] \tag{2.9} \end{equati…

問題 2-1 の解答例

ファインマン& ヒッブス著「量子力学と経路積分」には, 問題が 122 問も存在している.それらに対して, 今日から自己流に考えた解答例を順に書いて行こうと思う. (参考) 次の問題にはその解答が, 校訂者の Daniel F. Styer 氏のホームページに Difficult po…

たたみ込みの可換性

原書及び訳本では, 式 (12.45) の前で「関数 $B$ は相関関数 $A$ の逆であること」, すなわち, 次のような「たたみ込み」(convolution) の関係式が成り立つと書いてある: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangl…

特性汎関数について

「特性汎関数」が式 (12.12) で次のように定義されている: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \def\odiff…

Poisson分布と指数分布

第12章は「関数の確率」が経路積分によって議論できることを述べている. その導入部で, 次のような意味の文章が書かれてある:「離散的事象がランダムに起こっている例として, 宇宙線が検出器に入射する場合がある.粒子が平均計測率 $\mu$ で降下すると, …

式(5.17)について

約1ヶ月ぶりに書く記事である.今は第 12 章「確率論に於ける諸問題」に取り組んでいるのだが, 学生時代から確率・統計は非常に苦手なので, 例によって式を理解するのに大分苦労している.そのために多くの参考書を見ながら再勉強している訳である.その中…

ポーラロンとファインマン

J.T.Devreese がポーラロンについての優れた概説を次に書いている: Polarons, Review article in Encyclopedia of Applied Physics, $\mathbf{14}$, 383, (1996) この論文は次のサイトから入手出来る: https://arxiv.org/pdf/cond-mat/0004497.pdf その § …

表 11-1 の $E_{f}$ を Mathematica で数値計算する

次の式 (11.75)の $A$ は, その中の積分を閉じた形で行うことが出来ない: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #…

式(11.78)から式(11.79)の$E_{0}^{'}$を求める

まず校訂版にあるように, 式 (11.2) と式 (11.13) とから次式が言えることに注意する: $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1…

式(11.77)の$B$を求める

式 (11.77) は式 (11.62) の第 2 項目である $B$ を求めたものである: $$ B=\frac{3C}{v w} \tag{11.77} $$ ファインマンは「$B$ を求める積分は容易に行える」と言っている.論文や本で著者が「この計算は容易に実行出来る」と述べている場面によく出会う…

式(11.71)と式(11.72)の導出

10月19日に書いたが,Schulmanが「積分の端点についてどうする必要があるのかよく分からない」と述べている式の導出に挑戦して見よう. ファインマンは, まず式 (11.70) で量 $Z(t)$ を次のように定義している: $ \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\lang…

式(11-69)の導出

前に書いた記事に関連して, 式 (11.69) の導出に挑戦した過程を示しておこう.式 (11.67) を $I=\exp(I')$ とすると $I'$ は, $ \def\ket#1{|#1\rangle} \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangl…

wxMaximaを使う

式 (11.69) を証明するために次式が言えることを示す必要があった: $ \def\bra#1{\langle#1|} \def\BK#1#2{\langle #1|#2\rangle} \def\BraKet#1#2#3{\langle#1|#2|#3\rangle} \def\ppdiff#1#2{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \def\odiff#1{\frac{d}{d #…

ポーラロンについて

今第11章の §11-4 極性結晶中の遅い電子 のまとめに取り組んでいるが, 前に述べたようにここにずっと止まっている.そこでは「ポーラロン」( polaron) の議論がされている.ポーラロンについては, ファインマンも重要な論文を書いているようである.また, 「…

遷移振幅について

前に「遷移振幅と遷移要素の違い」について書いたが, 第8章などに振幅 $G_{mn}$ という量が出て来るので, もう一度遷移振幅についてまとめておくことにする. 振幅$G_{mn}$ について § 8-9 強制調和振動子 で「初めに状態 $n$ に在った振動子が時刻 $T$ に状…

式(11-57)中の波数$k$についての積分

式(11-57)中の波数$\mathbf{k}$についての積分を実際に行うことは数学の苦手な初心者には少しハードルが高かった。苦労した結果を少し詳しく書いておく.まず関係する部分だけを抜き出すと次となる: $$ \def\mb#1{\mathbf{#1}} \def\reverse#1{\frac{1}{#1}…

問題9-8中の振動子波動関数について

問題文の中で振動子に対する波動関数を校訂版では$\phi_1(x)=\sqrt{2}x\phi_0(x)$と修正している.これについて考えてみる.振動子の波動関数は式(8-17)$\sim$式(8-19)から $$ \def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}} \def\B…

式(9-43)に於ける$\bar{a}$の導入について

校訂版では,原書の量$a_{1\,\mathbf{k}}$を敢えて次式により定義した$\bar{a}_{1\,\mathbf{k}}$を式(9-43)の前で導入して,以後では$a_{\mathbf{k}}$の代わりに全てそれを使用している: $$ \def\mb#1{\mathbf{#1}} \begin{equation} \bar{a}_{1\,\mb{k}}\equ…

問題7-10のヒントの式について

再検討した結果、前に載せた記事を再掲いたします。*1 原書及び校訂版のいずれに於いても,問題7-10に於けるヒントの式は次のように書かれている: $$ \begin{equation} \acute{S}_{cl}-S_{cl}=\frac{1}{2}\int dt \int ds\, f(t)f(s)g(t,s)+\int dt\, \bar{x…

遷移振幅と遷移要素の違い

問題7-14について 原書に於ける問題7-14の問題文は次となっている: Show that the transition amplitude of $(m/\epsilon)(x_{k+1}-x_k)f(x_{k+1})$ is equivalent to that of $(f\cdot p)$ ここの「遷移振幅」(transition amplitude)は「遷移要素」(transi…

第6章の式(6-58)について

原書及び和訳本では,第6章の式(6-58)は次のようである: $$ \displaystyle \def\mbraket#1{\mathinner{\left[#1\right]}} K^{(2)}(b,a)=\left(\frac{m}{2\pi\hbar^{2}}\right)^{2}\left(\frac{m}{2\pi i\hbar T}\right)^{3/2}\int d^{3}\mathbf{r}_c \int d…

第6章の式(6-101)の下の式について

原書とその邦訳本そして校訂版のどの本に於いても,第6章の式(6-101)の次にある式は以下のようになっている: $$ 2i\int_0^{\infty}\frac{\sin y}{y}\,dy=2\pi i $$ しかし,岩波の「数学公式$\mathrm{I}$」§56 (p.251) に次の公式が載っている: $$ \int_0^{…